
野菜を食べないと、どうなる?
「最近、野菜が不足気味かも」……そんなこと、ふと感じることありませんか? 野菜が健康によいと分かっていても、十分な量を食べるのは難しいかもしれません。野菜が不足するとどんな健康リスクがあるのでしょう。
「野菜を食べなさい」といわれた記憶
子どもの頃から「野菜を食べなさい」と大人から口うるさくいわれた経験は、多くの人が持っていることでしょう。そのときに必ず付け加えられるのが「体にいいんだから」という言葉です。
ところが現実を見ると、多くの人は大人になっても「野菜を食べない」生活を送っているようです。厚生労働省の『令和4年 国民健康・栄養調査』によると「野菜をたくさん食べるようにしている」と答えた人(30歳以上)は、男性で約45%、女性で約60%でした。
どうしたことでしょう。子どもの頃にあれほど口うるさく大人からいわれて、「野菜を食べることの大切さ」が十分に分かっていたはずなのに、自分が大人になっても、半数近くの大人がまだ十分な量の野菜を摂取できていないのです。
なぜ「野菜は体にいい」のか?
野菜の何が「体にいい」のでしょう。よくいわれるのは食物繊維の効果。野菜が不足すると大腸内の悪玉菌が増えて腸内環境が悪化。腸内細菌叢(フローラ)の形成が不十分になり便秘になりやすくなるといわれます。
また、野菜は低脂肪、低エネルギーのうえ、「かさ」が多いので満腹感を得やすく、過食を防いでくれます。さらに野菜の摂取によって腸内環境が整うと免疫細胞が活性化するともいいます。
特に緑黄色野菜に含まれるビタミンAは、皮膚や目、のどや鼻などの粘膜の機能を守り、ウイルスや細菌が体内に侵入するのを防ぐバリア機能を果たしてくれます。
緑黄色野菜には他に抗酸化作用や肌の健康を保つといわれるビタミンCやビタミンB群、ビタミンK、葉酸、鉄、カルシウムなどのミネラルも多く含まれています。なかでもカリウムは、体内の余分なナトリウム(食塩)を体外に排泄する作用があり、高血圧の予防になるとされます。
野菜好きの「はず」の女性の野菜不足?
野菜は免疫力や抗酸化力アップなど、健康維持に役立つ素晴らしい食品であるにもかかわらず、じつは思ったよりも食べられていないのです。
「令和4年 国民健康・栄養調査<野菜摂取量の状況>」によると、1日の摂取目標量350g以上(「健康日本21(第二次)」)を食べている人は全体の3割以下。男性が28.9%で、女性は24.8%に過ぎませんでした。
1日の摂取量の平均値(20歳以上)は、男性277.8g、女性263.9gで、なかでも20歳代がもっとも少なく、男性232.1g、女性189.6gです。
また20歳代で1日350g以上の野菜を摂取している者の割合は、男性20.3%、女性11.6%で全世代中、最低の数値です。さらには30歳代の女性のその割合は15.3%、40歳代女性でも14.1%と、「ヘルシー好み」で「野菜好き」と思われた女性における「野菜不足」は、「野菜に最も縁遠い」と思われた同世代の男性以下(30歳代24.1%、40歳代22.3%)なのでした。
野菜不足は生活習慣病の原因に?
野菜不足は便秘や肌荒れはもちろん、免疫力の低下からかぜをひきやすくなったり、疲れやすくなったりしがちだといいます。肩こりやイライラなど、様々な体の不調とも無縁ではありません。
また、緑黄色野菜のもつ抗酸化作用はLDL(悪玉)コレステロールが酸化するのを防ぎ、動脈硬化の予防に効果的ともいわれます。ビタミンCやビタミンAの主成分のレチノールは発がん物質の発生を軽減してくれます。
野菜が不足すると将来、肥満や高血圧、糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まり、脳梗塞や心筋梗塞、大腸がんが発症しやすくなるといいます。
こうした野菜の様々な恩恵を受けないまま毎日、食生活を過ごすのはもったいないです。日ごろから意識して野菜を食べるようにしたいもの。
例えば1日3食のたびに野菜を少しずつでも摂るとか、コンビニで弁当を買うときは、生野菜サラダよりもおひたしや煮物を選ぶとか(野菜の「かさ」が減り、より多く野菜を食べられます)、野菜ジュース(塩分、糖分無添加)で不足を補うなどして、野菜のチカラを存分にいただきましょう。
<参考>
*「野菜、食べていますか?(e-ヘルスネット)」「令和4年国民健康・栄養調査」(厚生労働省)
*「子どもの健康と野菜摂取について」(独立行政法人 農畜産業振興機構)
*「野菜不足って何が問題なの?」(サントリーウエルネスOnline)
*「野菜が足りないとどうなるの?」(全国健康保険協会)