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「ナトカリ比」と高血圧の関係とは?

「ナトカリ比」って聞いたことありませんか?  

「ナト」はナトリウムのこと、「カリ」はカリウムのことをさしているのですが、この2つの比が、高血圧と関係があるというのです。 

どういうことでしょう? 

 

ナトリウムとカリウムの関係とは? 

ナトリウムは、ご存知のように食塩のことをいいます。食塩は摂り過ぎると血圧が高くなることは広く知られています。 

一方、カリウムはナトリウムと同様、人間に必須のミネラルの一種ですが、ナトリウムを体外に排出するはたらきをもっているといいます。 

カリウムの摂取が不足すると血圧を高めるともいわれています。 

つまり、ナトリウムは摂り過ぎることで、そしてカリウムは摂らなさ過ぎることで、血圧を上げるというわけです。 

ナトリウムとカリウムは、ともに細胞の浸透圧を調整して、水分とミネラルのバランス、血圧を適切に保つなどの重要な役割を担っている必須ミネラルといいます。 

 

ナトカリ比」を知っていますか? 

 私たちの食生活は、ややもするとナトリウム(食塩)を多く摂取してしまう傾向がある一方、カリウムを含む野菜や果物、海藻類などを食べる機会が少ないといわれています。 

こうした高ナトリウム(食塩)、低カリウムの食生活が血圧を高めて、循環器系の疾患になりやすいというわけです。 

 そんななかナトリウムとカリウムの比を示した「ナトカリ比」が近年、注目されているといいます。 

「ナトカリ比」というのは、尿中に排泄されるナトリウム(Na)の濃度をカリウム(K)濃度で割った「尿ナトカリ比」(Na/K)のことだそうです。 

つまり「ナトカリ比」は、「血圧を上げる作用(ナトリウム)」と「血圧を下げる作用(カリウム)」の「比」ともいえそうです。 

 

ナトカリ比」は高血圧と関連する? 

 日本高血圧学会によれば、摂取した食塩の約90%、カリウムの約70〜80%が尿として排泄されることから、「ナトカリ比」は、「食事から摂取したナトリウムとカリウムの量比を客観的に評価できる」としています。 

この比が高いほど、食塩の摂取が多いことを示すそうです。 

 食塩の摂り過ぎが指摘される日本人の「ナトカリ比」は高い傾向があり、平均で「4」だそうです。日本高血圧学会によると、健康な日本人のナトカリ比の目標値は「2未満」が理想だそうですが、当面の実現可能な値として「4未満」を提唱しています。 

「ナトカリ比」と血圧が強く関連することは、様々な研究で明らかになっているといいます。この「比」の数値を低くすることが高血圧や循環器疾患の予防にも有効だとされているのです。 

 ちなみに自分の「ナトカリ比」を知るには医療機関での検査が必要です。 

 

基本は食塩の過剰な摂取を控える? 

「ナトカリ比」は食事からのナトリウム、カリウムの摂取量で変化します。 

食事からのナトリウム(食塩)の摂取が多くなると、尿中のナトリウムが多くなり「ナトカリ比」が上昇します。逆にカリウムの摂取を多くすると尿中のカリウムが多くなり、「ナトカリ比」は低下します。 

ただ、カリウムで血圧の上がるのを防げるといっても、血圧のコントロールの基本はナトリウムの過剰な摂取を控えることです。 

主食や主菜など、メインの料理だけでは「ナトカリ比」が高くなりがちです。 

カリウムの含まれる副菜や果物、トマトジュース(無塩)を加えるなどして、「ナトカリ比」を整えるのがよいようです。 

 

カリウムを多く含む食品は? 

カリウムが多く含まれる食品には、例えば野菜類では、切り干し大根やほうれん草、ニンジンなど、果実類ではドライフルーツ類、バナナなど、豆類では納豆、煮豆など、きざみ昆布やヒジキなどの海藻類もカリウムが多く含まれています。 

カリウムは水に溶けやすいので、みそ汁やスープなどにして溶け込んだカリウムを丸ごと食べるのが効果的なようです。 

カリウムは多く摂取しても尿中に排泄されるので問題ないといいますが、腎臓病の人はカリウム摂取量に制限があるので注意が必要といわれます。 

 

<参考> 

*「Press Release 尿ナトリウム/カリウム比(尿ナトカリ比)ワーキンググループ コンセンサスステートメントの発表について 2024年10月8日」(特定非営利活動法人 日本高血圧学会) 

*「ナトカリ手帳(第3版)」(厚生労働省) 

*「『ナトカリ比』に注目」(東京新聞/2025.2.11) 

*「カリウムの働きとは? カリウムを含む食べ物と摂取量の目安も解説」(株式会社ニチレイフーズ) 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。

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