冬の傷が治りにくい理由は?
ちょっとした切り傷やすり傷なのに、冬はなんだか治りにくい……そんなふうに感じたことありませんか?
寒くて体力が落ちているからでしょうか? それとも気のせい?
生きていくために必要な代謝って?
「代謝」という言葉、よく耳にしますよね。代謝って何でしょう?
「古いものと新しいものとが入れかわること」(広辞苑第五版)……「簡にして要」ですが、資料を頼りに別の言い方をすれば、「生命を維持するために必要な栄養や水、酸素を取り込み、消化、吸収、さらに必要な物質とエネルギーの生成、老廃物の排出などといった、体内で起こる化学反応全般」のことを代謝というらしいです。
代謝は生物が生きていくうえで必要不可欠なものといえます。
基礎代謝量の消費トップは筋肉
代謝は「基礎代謝」と「新陳代謝」に大きく分けられます。
基礎代謝とはご存知のように「生命活動を維持するための代謝」のことで、寝転がってじっとしていても基礎代謝量は消費されます。心臓や呼吸、体温の調節など生命の維持にエネルギーが使われるからです。
1日の消費エネルギーの約6割を基礎代謝量が占めるといわれています。
基礎代謝量は体の組織ごとに異なり、1キロ当たりの代謝量がもっとも高いのは心臓と腎臓。ただ、これらの臓器は重量が少ないので体全体に占める比率はそれほど多くありません(心臓9%、腎臓8%)。
冬は多くのエネルギーを消費する?
逆に骨格筋は1キロ当たりの代謝量は少ないのですが、全体の筋量が多いので代謝量の比率は22%でトップ。肝臓と脳もその重量は少ないにもかかわらず代謝量の比率は2割を超えます。
「筋肉を増やすと効率的にダイエットができる」といわれるのは、骨格筋の基礎代謝量が高いことと関係しているようです。
また冬は基礎代謝量が上がり「ダイエットのチャンス」ともいわれています。 夏と違い外気温が低い冬は、体の機能や筋肉、内臓を寒さから守るために代謝エネルギーを多くして体温を維持する必要があるからです。
冬の基礎代謝量は夏より10%上昇するともいわれているようです。
新陳代謝と冬の傷の治りにくさ
いっぽうの「新陳代謝」とはどんなものでしょう。
人間の体は数十兆ともいわれる膨大な数の細胞からできているといわれます。脳や心筋の細胞を除いた体のすべての細胞は、一定の期間を過ぎた古い細胞は死滅して新しい細胞へと生まれ変わるといわれます。
こうした細胞の入れ替わりを新陳代謝と呼んでいます。
基礎代謝が冬に上がるのとは対照的に、新陳代謝は冬の寒い時期は働きが低下するといわれます。
「冬の傷は治りにくい」とよくいいます。これは体温を上げようとする基礎代謝の働きが高まることによって皮膚表面の血流が制限され、栄養が十分に供給されないために新陳代謝の働きが低下するのが原因といわれます。
新陳代謝の速度と老化の関係
新陳代謝も基礎代謝と同じように加齢とともに代謝率が低下します。
細胞は永遠に分裂を繰り返すわけではなく、必ず限界があるのです。
新陳代謝のスピードは加齢とともに下降線を描きます。生まれ変わる新しい細胞よりも古くなって死滅する細胞が多くなってきて、「老化」を自覚するようになります。
若いときには感じなかった傷の治りにくさを感じるようになるかもしれません。
ちなみに代謝が激しい子どもと大人には時間感覚に大きな差があります。
1日が長く感じた子どもに比べ、大人の1日はあっという間です。
19世紀フランスの哲学者ポール・ジャネの提唱した法則によると、年齢による時間感覚は、例えば10歳児の1年は、30歳の人なら4か月、40歳なら3か月に感じるのだそうです。
あなたは、1年をどのくらいの時間に感じますか?
<参考>
*「加齢とエネルギー代謝」(e-ヘルスネット/厚生労働省)
*「代謝が悪いってどういうこと?Q&A で学ぶ『代謝の正体』」(Tarzan 2021.3.11発売/株式会社マガジンハウス)
*「<ジャネーの法則>大人になると、どうして早く時間が過ぎたように感じるの?」(日本気象協会 tenki.jp)
*「大人と子ども、時間の感じ方なぜ違う」(朝日新聞デジタル)