プラスコラム
PLUS COLUMN

禁煙に加熱式や電子タバコは有効か?

タバコに対する世間の風当たりは強まるばかり。そんなことから禁煙方法の1つとして加熱式タバコや電子タバコを吸っている人は少なくないようです。 

でもそれで本当に禁煙できるのでしょうか?  

 

加熱式タバコの普及が禁煙行動に影響? 

「タバコが体に悪いことは十分に分かっている。やめたいがなかなかやめられない」……といった愛煙家も多いのでは?  

そんななか紙巻きより有害性が低いのではという期待から禁煙への1つステップとして加熱式タバコを利用する人も少なくないようです。 

ただ、加熱式タバコには依存性のあるニコチンはもちろん、少ないとはいえ有害な物質が含まれていることなどから、健康に悪影響を及ぼす可能性も指摘されています。 

また加熱式タバコの普及が「禁煙を阻害して、若い世代を喫煙習慣に誘導する」といった専門家の意見もあるように、「禁煙したい」人の割合が減少してしまっているというデータもあります。 

 

加熱式タバコでは禁煙できない? 

「国民健康・栄養調査(令和元年)」(厚生労働省)によると、加熱式タバコの販売が開始される前々年の2011年の「禁煙したい」人の割合は男性42.8%、女性32.8%と高い数値を示していました。 

それ以降、禁煙したい人の割合は増減を繰り返しながらも比較的安定。 

2018年には男性38.0%、女性30.6%だったのが、翌19年には男性30.9%、女性24.6%にまで大きくダウンしたのです。 

紙巻きタバコより加熱式の方が「有害性が低いから健康リスクも低いのでは?」という思い込みや期待から、加熱式タバコに切り替えて喫煙を継続した結果、禁煙行動そのものをやめてしまったのではと推測されます。 

加熱式タバコは禁煙方法としての有効性がなかったといえそうです。 

 

電子タバコでの禁煙の有効性は? 

 では、加熱式タバコと違いニコチンを含まない電子タバコでの禁煙チャレンジは効果があるのでしょうか? 

 国立がん研究センターの調査(「紙巻きタバコの禁煙方法と有効性を調査」)によると「電子タバコの使用による禁煙の有効性は低く、電子タバコを使用した人は、使用しなかった人より禁煙の成功率が38%少なく、電子タバコが禁煙の成功確率を約3分の1低下させている」ことが分かったということです。 

電子タバコの禁煙効果は世間でいわれているような結果を示せなかったようです。 

 

タバコ」の束縛から脱するには? 

 逆に禁煙外来を受診して薬物療法(ニコチンを含まない薬の処方)を受けた人の禁煙成功率は約2倍上昇したといいます。 

 禁煙を目指すなら、「タバコ」といわれるものをいっさいやめるのが結局、いちばんの有効な方法ということになりそうです。 

今ではタバコを吸える場所を探すのもひと苦労。家で吸うのもはばかられ、やっと見つけた喫煙所は満員で、やっと入ればもうもうの有害煙に迎えられ、入ったことを大後悔するといったことも。 

吸いたいときに吸えないイライラを解消する方法は……やはりもうアノの2文字……しかないですよね(禁煙)。 

 

<参考> 

*「令和元年 国民健康・栄養調査」(厚生労働省) 

*「加熱式タバコの規制強化」(e-ヘルスネット/厚生労働省) 

*「紙巻きタバコの禁煙方法と有効性を調査 電子タバコでの禁煙は有効性が低い」(国立がん研究センター) 

*「たばこの害と禁煙のすすめ」(独立行政法人環境再生保全機構) 

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。