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加熱式タバコのあらたな健康リスク

紙巻きタバコから加熱式タバコへ移行する喫煙者が増えているそうです。 

有害性が低いというのがその理由だそうですが、本当なのでしょうか?  

さらにここにきて加熱式タバコのあらたな危険性が指摘されています。 

 

若い世代ほど加熱式タバコを吸っている 

加熱式タバコとは、タバコの葉を燃焼させずに、電気的に加熱して発生させたニコチンを吸入するタバコのこと(厚生労働省のe-ヘルスネット)。 

紙巻きタバコに比べて健康への影響が少ないのではという期待感もあって、2016年頃から加熱式を使い始める人が急速に増えてきたようです。 

2019年の「令和元年 国民健康・栄養調査」(厚生労働省)によると、喫煙者全体の4分の1(男性27.2%、女性25.2%)が加熱式タバコを吸っていました。 

とくに若い世代ほど加熱式タバコを使用していて、20代では男性の33.9%、女性の52.9%、30代では男性47.6%、女性50.0%でした。 

 

やはり加熱式タバコにも健康リスクが 

 有害成分が紙巻きタバコと比較して少ないということから人気を得た加熱式タバコですが、健康リスクまで低いというわけではなさそうです。 

例えば「加熱式タバコの煙には、ニコチンや発がん性物質などの有害な物質が含まれています」と国立がん研究センターでは指摘しています。 

 また、日本学術会議が加熱式タバコの有害性について報告書を公表したとする報道(東京新聞2023.12.6/「低有害性 科学的根拠なし」)がありました。 

新聞によれば、加熱式タバコは「ニコチン濃度は紙巻きタバコと同程度かやや低い程度」「紙巻きタバコよりも高濃度の物質を56種類含み、新たな病気のリスクとなる可能性がある」などといった内容でした。 

 

加熱式タバコの誤飲事故が増えている 

 加熱式タバコの健康リスクに関しては、喫煙者の健康以外にもう1つ別の問題が生じているようです。 

幼い子どもが誤って飲んでしまう事故です。 

 消費者庁や(独)国民生活センターによると、近年、加熱式タバコの販売数の増加に伴い、乳幼児の誤飲事故があとを絶たないということです。 

 医療機関ネットワークには2017年度以降の約6年間に、6歳未満の乳幼児がタバコの葉が入った加熱式タバコのスティックやカプセルなどを誤って飲んでしまう事故が112件寄せられたといいます。 

 また最近の加熱式タバコには誘熱体として金属片が内蔵されたものがあり、これらの製品のスティックを誤飲する事故も発生しているようです。 

口や臓器を傷つける恐れがあるので注意が必要ともいわれています。 

 

もっとも効果的な誤飲防止策は禁煙 

 消費者庁の調べによると、誤飲事故の多くは02歳児に見られるといいます 

また、約5割の保護者が乳幼児の前で喫煙している、3割近くの家庭でタバコや灰皿が乳幼児の手の届く場所に置かれているなど、好奇心旺盛な乳幼児の興味が刺激されてしまう環境になっているようです。 

乳幼児の誤飲事故を防ぐためのポイントを消費者庁が紹介しています。 

子どもの目の前で喫煙しない、タバコや灰皿をテーブルの上に放置せず子どもの目に触れないところに保管する、吸い殻はゴミ箱に捨てない、捨てるときはビニール袋などに入れて密閉する、空き缶やペットボトルを灰皿がわりにしない…などです。 

 万一、加熱式タバコを誤飲してしまったときは、水や牛乳などを含め、何も飲ませないで医療機関を受診するようにと消費者庁はいっています。 

 でも最大の予防策は禁煙。加熱式タバコを含め、いっさいの「タバコ」と呼ばれるものを吸わないことかもしれません。 

 

<参考> 

*「加熱式たばこの健康影響」(厚生労働省 e-ヘルスネット) 

*「加熱式たばこ」(国立がん研究センター・がん情報サービス) 

*「加熱式たばこ 乳幼児の誤飲注意」(東京新聞/2022.12.22 

*「なくならない乳幼児による加熱式タバコの誤飲に注意」(独立行政法人国民生活センター) 

*「乳幼児のたばこの誤飲に注意しましょう」(消費者庁) 

 

 

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。

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