プラスコラム
PLUS COLUMN

知らず知らず行っている歯の食いしばりにご用心

「歯を食いしばって頑張る」なんていう言葉があります。

人はここぞというときには歯を食いしばる………「頑張りどころ」に必要な食いしばりですが、歯へのダメージも強いようなのです。

 

歯とスポーツの深い関係

 食べ物を噛むときに大事な奥歯ですが、それ以外にも、人は奥歯を強く噛むことで重心が安定するそうです。重いものを持つときや瞬発力が必要なときも、奥歯を強く噛みしめることで、力が発揮できるといわれています。

世界のホームラン王といわれた王貞治さんは選手時代、ホームランを打つときに激しく歯を食いしばったので歯が悪くなったという有名な話があります。

王貞治さんに限らず、トップアスリートたちは、パフォーマンスを高めるために噛み合わせを改善することも多いそうです。

また、プレイヤーが激しくぶつかり合うラグビーなどの競技では、マウスガードをつけて衝撃から歯を守り、瞬発力をつけて、プレー中のパフォーマンスを向上させるそうです。

スポーツ歯学という分野もあるそうですから、歯とスポーツは密接な関係があるようです。

 

無意識に行っていることも

「ここぞという頑張りどころ」で奥歯を噛み締めるときもあるかもしれませんが、実は私たちは無意識のうちに歯を噛み締めて歯に大きなダメージを与えることがあるといわれています。

 たとえば、眠っているときの歯ぎしりや食いしばり。

また、スマホやパソコン操作などに集中しているときに、知らず知らずのうちに歯を噛み締めていることが多いそうです。

 

歯を失う原因に

専門用語で「ブラキシズム」と呼ばれる、歯を食いしばる癖は、実は虫歯や歯周病と同様に歯を失う原因の一つに挙げられているそうなのです。

とくに睡眠中の歯ぎしりは、起きているときと比べて数倍強い力がくわわっているというので、ご用心。

歯に強い力を加え続けた結果、歯が割れたり、歯を支える組織にもダメージを与えることになるそうです。

 

ストレスケアも大事

睡眠中に起こる「睡眠時ブラキシズム」は、ストレスが原因だといわれています。

睡眠中の歯ぎしりは自分ではなかなか気づかないそうですが、朝起きたときに、虫歯でもないのに歯が痛んだり、顎が疲れていたりするときは、歯ぎしりが原因かもしれません。

 思い当たるふしがある人は歯科医に相談を。ナイトガードとよばれるマウスピースの一種をつける「スプリント療法」などで症状が緩和されることがあるようです。

また、睡眠中の歯ぎしりは、精神的なストレスも大いに関係しているといわれています。

 自分なりのストレスケアを心がけてみるのもいいかもしれません。

 昼間は、スマホやパソコン画面を操作しているときなどに、歯と歯がくっついていないか、チェックしてみましょう。

歯と歯がくっついていたら、口の力抜いて歯を離す習慣をつけるとよいそうですよ。

試してみてください。

 

<参考>

*「力でダメージ 歯を喪失」(東京新聞 2020年6月11日 夕刊)

*「歯ぎしりは心のSOSの可能性も 知っておきたいその原因」(AERA dot.)

 

 

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。