プラスコラム
PLUS COLUMN

暑さの中でのマスクと熱中症の不安

「暑いなあ」と感じる日が多くなってきました。熱中症が心配な季節でもあります。特に今年はマスクという余分なもので顔を覆っているだけに不安は増す一方です。

 

マスクをして暑い中を歩く?

汗ばむ季節となりました。

テレビの天気予報でも夏日、真夏日といった言葉が頻繁に聞かれるようになり、「今年も暑くなりそうだなあ……」などとひとりごちる人もいらっしゃるかもしれません。

でもちょっと待ってください。

今年の夏は去年までの夏とは確実に違っていることにお気づきかと思います。

例のあの忌々しいウイルスのおかげで、生活様式が一変してしまいました。

その典型がマスクです。

今やマスクなしでは不安で外を歩くことすらできません。

なのに、暑さも本格的になろうとするこの時期、マスクをしたまま街を歩いても大丈夫なのでしょうか。

 

熱中症は5月に多い?

今年はマスクとともに過ごす初めての夏ということになりそうです。

テレビなどでもマスクをかけることによる熱中症の危険が話題になっています。

毎年、どれくらいの人が熱中症にかかっているのでしょうか。

総務省・消防庁の「熱中症による救急搬送状況」によると、2016年は5万412人、17年は5万2,984人、18年は9万5,137人、19年は7万1,317人でした。

熱中症は5月に多いとよくいわれます。例えば19年の5月は4,448人で、6月よりも300人近く多く搬送されています。

暑くもなく寒くもない、一年で一番過ごしやすいといわれる5月なのになぜ?

まだ体が暑さに慣れていないせいだとよくいわれています。

加えて今年はマスクによるリスクが……。

マスクをすると熱が体内にこもるとか、マスクの内側に適度な湿り気があり喉の渇きに気づきにくいなど、熱中症の危険についてもテレビなどで紹介されています。

 

熱中症は高齢者ばかりではない?

熱中症というと高齢者が中心で、若い世代は関係ないと思っている人がいるかもしれません。

確かに65歳以上の高齢者が全体の52.0%で過半数を占めていますが、残りの48.0%はそれ以下の年代です(「熱中症による救急搬送状況(2019年)」より・以下同)。

なかでも18歳〜64歳は34.9%で全体の3分の1以上です。

7歳〜17歳も12.2%あり、熱中症が決して高齢者ばかりの問題ではないことが分かります。

 

屋外での熱中症は3割近く

熱中症の本番は7月〜8月です。

平年並みの暑さといわれた2019年でも7月の救急搬送者数は1万6,431人、8月はその2倍以上の3万6,755人でした。9月でも9,500人以上いました。

熱中症の発症現場で一番多いのはどこだと思いますか?

住居だそうです。38.6%でした。ここ数年連続の1位です。

次いで道路が15.6%、競技場や屋外駐輪場などの屋外が12.5%、職場(工事現場、工場や作業所など)が10.4%の順でした。

建物の中ならエアコンの活用で熱中症のリスクを軽減できそうですが、道路や工事現場などの屋外ではそうもいきません。

さらに今年はマスクのリスクも加わり、今まで以上に熱中症対策への工夫が求められるかも……。

 

熱中症を防いで医療機関を救う?

ウイルス感染が怖いからマスクは外せない、でも熱中症も怖いからマスクを外したい……悩ましい問題です。

熱中症の予防といえば、水分補給、十分な睡眠、エアコンの使用、規則正しい生活リズムなどがよくいわれています。

さらに今回はマスクをした上での熱中症予防ということになり、対策が難しく、特に外出のときには注意が必要かも。

すでに巷では暑さ対策用のマスクが様々市販されているようです。

従来の熱中症対策に加えて、この際アイデアや工夫が込められたマスクや対策グッズを試してみてはいかがでしょう。

「熱中症による病院への搬送がふえれば、医療機関の崩壊の危険がさらに高まる」と多くの専門家が指摘しています。

なんとしても熱中症にならない、そしてウイルス感染から身を守る……今年の夏はかつてない長い夏になりそうです。

 

<参考>

*「2019年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」(総務省・消防庁)

*「熱中症に注意!」(東京消防庁)

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。

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