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骨粗鬆症

あなたの骨、スカスカになっていませんか?

最近、ちょっとしたことで骨折したということはありませんか? それは骨粗鬆症の症状の1つ。そのほか、骨粗鬆症になると、背中や腰が痛む、身長が縮む、背中が曲がるなどの症状が出てきます。 

骨粗鬆症は、骨の中のカルシウムが溶け出して骨量・骨密度が減少し、骨が軽石のようにスカスカになっている状態です。そのために、ふつうなら骨折しないような軽い力が加わっただけで、骨折を起こしやすくなるのです。ひどくなると、大きなくしゃみをしただけでも骨折をすることがあります。


「たかが骨折くらい」と思う方もいるかもしれませんが、問題は骨折が高齢者の寝たきりの大きな原因になるということ。寝たきりの状態から認知症になったり、脳梗塞を発症するケースも少なからずあります。
また、寝たきりにならないまでも、背中が曲がると、内臓が圧迫されて、食欲不振や便秘が起こったり、胸焼けが起こったり、呼吸機能の低下を招くなど、QOL(生活の質)が大きく下がります。

60代女性の3人に1人が、骨粗鬆症に

骨粗鬆症の男女比は、1対3と圧倒的に女性に多くみられる病気です。女性の場合は閉経を迎える50歳前後から増えてきて、現在、60代の女性の3人に1人、70代の女性の2人に1人が骨粗鬆症にかかっているといわれています。
でも、なぜ女性に多い病気なのでしょうか?


それは女性ホルモンと大きなかかわりがあります。女性ホルモンのエストロゲンは、骨量を維持する働きがありますが、閉経後はこの女性ホルモンの分泌が急激に減ってしまいます。そのため、骨量も一気に低下。閉経後の8~10年のあいだに、平均でなんと20%も骨量が減少してしまうのです。
骨量は加齢に伴って少しずつゆっくりと減少していきますが、女性は閉経後の時点で、すでに20%も減少してしまうというわけです(グラフ参照)。若いときの骨量を100%として、70%未満になると「骨粗鬆症」と診断されます。

 

女性の骨量の変化グラフ

ご用心!若いころのダイエットも大きな要因に

ところで、最近は若い女性の中にも骨粗鬆症予備軍が増えています。その最大の原因はダイエット。骨量は、骨格の成長とともに成長期にぐんぐん増えて20歳代でピークになります。40歳くらいまではその骨量を維持できますが、その後は減少の一途をたどります。
骨を貯金する大事な時期に無理なダイエットをしていると、十分な骨量が蓄えられません。骨粗鬆症のリスクは、若くしてダイエットを始めれば始めるほど、そしてダイエットを何度も繰り返すほど高まります。20代~30代の方は、「骨粗鬆症なんてまだまだ先の話」と思いがちですが、今から体づくりをして、骨の貯金を貯めておくことが大切です。

閉経後は、年に1回は骨量チェックを

骨粗鬆症になると、骨折しやすくなるほか、慢性的な腰痛や背中の痛みに悩まされたり、背中や腰が曲がって身長が縮んだりしますが、初期のうちは自覚症状がありません。
「気がついたら骨がスカスカになっていた」ということのないように、今からしっかりと予防・対策をとることが大事です。
いったん骨粗鬆症になったら、もとに戻すことはできません。気になる症状があるときはもちろんですが、更年期に入ったら症状がなくても毎年1回は整形外科などで骨量測定の検査を受けて、自分の骨の状態を知っておくことが大事です。
骨量測定の検査には、超音波法、デキサ法などいろいろな方法がありますが、どの検査も安全で簡単に受けられ、痛みもありません。

こんな人は、骨粗鬆症にかかるリスクが高くなります

思い当たる項目がある人は、更年期前でも骨量測定をして、骨の状態を確認しておくと安心です。

  1. 家族に骨粗鬆症の人がいる。
  2. 閉経が早かった人。
  3. 小柄でやせ型(骨の細い)。
  4. からだを動かすことが少ない(運動不足)。
  5. たばこを吸っている。
  6. 子どものころから偏食が多い(カルシウムやビタミンD不足の人)。
  7. ステロイド薬を長期間服用している人

今日から始める、骨粗鬆症の予防と対策

加齢とともに、骨量が減っていくのは避けられませんが、骨量の減少をゆるやかにすることはできます。「骨の元気」を保つためには、食事と運動が大きなポイント。今日からさっそく実行してください。

1)カルシウム・ビタミンDをたっぷりと。納豆もおすすめです。

骨の栄養素であるカルシウムと、カルシウムの吸収を促すビタミンDを積極的にとりましょう。カルシウムが豊富に含まれている食品は、牛乳、ヨーグルト、小魚、小松菜、ひじきなどがあります。また、ビタミンDは、干しシイタケやレバー、サバ、カツオなどに多く含まれています。
カルシウムを骨に定着させる働きのあるビタミンKと、更年期からの女性に欠かせないイソフラボンがたっぷり含まれた納豆もおすすめの食品。毎日食卓にのせましょう。

2)骨に適度な負荷が加わる運動を

骨を強くするには、水泳よりは軽いジョギングなど、骨に適度な衝撃がかかる運動が効果的です。そのほか骨に負荷を与える運動には、階段昇降、縄跳び、バレーボール、バスケットボール、しこ踏みなどがありますが、中高年からいきなりこれらの運動を始めるとかえってひざを痛める原因にもなります。そこで、おすすめしたいのが、ウォーキング。しっかり歩くだけでも、骨に適度な刺激を与えることができます。無理のない範囲で行って、毎日続けましょう。

3)日光浴も大事

カルシウムの吸収を促すビタミンDは、日光に浴びることで活性化します。散歩やウォーキングなど戸外でからだを動かすことは、日光浴と運動の一石二鳥の効果が期待できます。

4)骨粗鬆症の人は治療も有効

骨粗鬆症と診断されても、あきらめないでください。ホルモン補充療法を行ったり、骨を壊す働きのある破骨細胞の活動を抑えるビスフォスフォネート薬剤やカルシウム剤、ビタミンD剤などの服用で、骨粗鬆症の進行を食い止めることができます。治療をしながら、食事の注意や適度な運動も心がけて「骨の元気」を保ちましょう。

プロフィール

大井 律子 先生
整形外科医
大井 律子 先生

医学博士 山口大学女性外来担当医

熊本県生まれ。 1997年、高知医科大学卒業。 同年、山口大学医学部整形外科教室へ入局し、医局関連病院、山口大学大学院医学系研究科などを経て、現職。 日本整形外科学会専門医。

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