飽食時代のパラドックス……隠れ栄養失調が増えている?
栄養失調といえば今や昔……「さすがにもういないでしょ?」と
いうのが大方の感想かもしれません。
でも飽食の時代といわれて久しい現代においても、「栄養失調」がありました。
経済的な貧困が理由ではない、豊かな時代の隠れた「栄養失調」って?
腹はふくれるけど、栄養はからっぽってこと?
かつての第2次世界大戦中や戦後の復興期の日本では、食料不足による栄養失調はめずらしくなく、
誰もが貧しく、いつも空腹をかかえていたといいます。
「おなかいっぱい食べたい」というのが多くの国民の夢でした。
それから70数年。
食べられるのに捨てられる「食品ロス」「食品廃棄」の問題がクローズアップされる、
なんとも悩ましい時代になりました。
内閣府や環境省の統計によると、日本では年間に630万トンもの食料が捨てられているとか。
国民1人当たり1日茶わん1杯分のご飯に相当する量ということです。
なんとも「もったいない」話ですね。
そんな飽食も極まれり的な日本の食料事情なのですが、
なぜかいま栄養失調が注目されているらしいです。
「人類の歴史は食べ物をどう確保するかの歴史」などともいわれています。
食べることが何よりも優先された時代をへて、今は食べ物をゴミとして捨てる時代。
う〜ん複雑な気持ちです。
そんな飽食への皮肉というか反逆というか、よく分かりませんが、
現代版・隠れ栄養失調の特徴は、カロリーは十分にとれているけれども、
栄養が不足しているのだそうです。
つまり「腹はふくれるけど、栄養のないからっぽの食事」ってことなんでしょうか?
ジャンクフードは文字通り「がらくた同然」の食べ物?
高齢者の栄養不足については以前からいわれていたようですが、
最近では若い世代、とくに女性の隠れ栄養失調が指摘されています。
食事を抜くとか、野菜しか食べないとかの自己流の過激なダイエットが原因だったり、
毎日コンビニ弁当やカップ麺、菓子パン、ハンバーガーなどのファストフードを
食べているというような偏った食事が、栄養失調を引き起こすというのです。
これらの食事の多くはジャンクフードといわれるものです。
ジャンク(JUNK)は「廃品、くず、がらくた」といった意味の英語ですが、
ジャンクフードは文字通り、がらくた同然の食べ物で、栄養がなく、
含まれているのは糖質と脂肪と塩分だけという専門家もいます。
本人的にはおなかがいっぱいになるから、それで十分ということなのかもしれないでしょうけど、
栄養的にはタンパク質やビタミン、ミネラルが不足して、
本人も知らないうちに隠れ栄養失調になるというパターンらしいです。
太っている人も栄養失調になる?
ところで栄養失調というと、やせている人だけと思いがちですが、
肥満の人でも栄養失調になるらしいです。
太っているのに栄養失調っていうのも、あまりイメージできませんが、
けっこういるようです。
「腹がへっては戦ができぬ」ということで、食事はまず空腹を満たすことが最優先、
栄養はとくに考慮しないということだったら、やはり肥満は当然の帰結なんでしょうけど、
それに栄養失調も加わったら二重苦ということになってしまいますね。
ジャンクフードでメタボで栄養失調……なんだか飽食時代のもの悲しさを感じます。
国民健康・栄養調査(厚生労働省平成28目年版)によると、
肥満(BMI/25以上)の割合は男性31.3%、女性20.6%だそうです。
逆に、やせ(BMI/18.5未満)の割合は、男性4.4%、女性11.6%で、
とくに20代の女性のやせの割合は20.7%で、この10年間、ずっと20%を超えています。
これらの肥満とやせの人のすべてが隠れ栄養失調というわけではないでしょうけど、それなりの数の人が隠れ栄養失調ではないかと思うのは、考え過ぎでしょうか?
では隠れ栄養失調になると、体にどんな変調をきたすのでしょうか? 次回は、隠れ栄養失調のいくつかのサインについて考えたいと思います。
<参考資料>
*「食事でかかる新型栄養失調」(三五館)
<参考URL>
*「新型栄養失調って何?」(オムロン(株))
http://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/life/171.html
*「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html
*「『食品ロス』を減らそう」(内閣府)
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201303/4.html
*「我が国の食品ロス・食品廃棄物等の利用状況等」(環境省)