
高層マンションのバツグンの眺望と引き換えにするものとは?
高層マンションの人気はあいかわらず続いているようですが、バツグンの眺望と引き換えに、高層ならではの不安やリスクもあるようで……。
体に与える影響以外にも、居住階ごとにある危険が予測されるらしいのです。
高層階になればなるほど救命時の生存率が低下する?
総務省が5年に1度行なう「住宅・土地統計調査」の平成25年版によると、11階以上のマンションは全国で324万戸、15階以上は85万戸になっていて、両方合わせるとマンション全体の18パーセント以上を占めています。
さらに前回の平成20年に比べると、11階以上は23.0パーセント増、15階以上は47.6パーセント増で、ここ最近のマンションの高層化をよく示しています。
そんな高層マンション人気のなか、イギリス・ロンドンで起こった高層マンションの火災事故。
「うちは大丈夫か?」と肝を冷やした方もいらっしゃるでしょう。
日本は建築基準法や消防法などの法律がかなり厳しいらしいので、ロンドンのような事態にはならないだろうと専門家の方もいっているようですから、ひとまず安心といったところでしょう。
……とはいっても安心は禁物ですけどね。
ところで火災以外にも高層マンションについて、ふだんあまり意識していない意外なデータが最近、雑誌で紹介されました。
救急救命時の生存率です。
カナダ・トロントの救急隊が、2012までの5年間に心肺停止におちいった8000人の高層マンション住人を対象に生存率を調べた結果を医学誌に発表したというのです。
それによると1〜2階の住人の生存率は4パーセントなのに対して、16階以上は1パーセント未満、25階以上では生存者はゼロだったということでした。
高層階にいくほど救急隊の到着に時間がかかるというのが生存率の低さの原因ではないかといいます。
心肺蘇生は1分1秒を争うといわれます。
呼吸停止後2分以内に人工呼吸をはじめれば90パーセントの人の命が救われ、時間が経過するとともに救命の確率は低下、呼吸が停止してから3〜4分が生死を分けるともいわれます。
日本の場合、救急車が現場に到着する平均所要時間は8.5分だそうです。
高層階に住んだ場合は、こうした万一のときに備えて心肺蘇生法を学んでおく必要があるかも。
「高所平気症」の子どもが増えている?
ところで、最近、「高所平気症」という言葉を耳にしたことありませんか?
高層マンションに住んでいる子どものなかには、高いところを怖いと思わない子どもが増えているらしいです。
そういえばテレビや新聞などで、子どもがマンションのベランダから転落したといったニュースにふれることが増えたように感じます。
東京消防庁によると、同庁管内で平成24〜28年の5年間で5歳以下の子ども108人が高所からの墜落事故で病院に救急搬送されたそうです。
「子どもが高層マンションで育つことで、高いところに恐怖を抱かなくなってしまう」と専門家は指摘しています。
高いところが怖くない「高所平気症」は、高いところが怖い「高所恐怖症」よりも、ある意味、とてもおそろしい現象かもしれません。
この他にも高層マンションに住むリスクとして「高層マンション症候群」といったこともいわれているようです。
真偽のほどは不明ですが、低体温や耳鳴り、めまい、不眠などの健康障害を指摘する専門家もいるようです。
筆者は高層マンションの住人ではないけれども、仕事やプライベートでビルの高層階を訪ねたときに、「ま、まだですかね〜」と、待てど暮らせど、さっぱりくる気配がないエレベーターに強いストレスを感じることが多々あります。
高層階のオフィスに勤める人たちは、朝夕の出退勤時や昼食時、なかなか来ないエレベーターに何を感じているんでしょうか……。
<参考資料>
*「キッズ・メディカ安心百科 子ども医学館」(小学館)
<参考URL>
*「平成25年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局)
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2013/10_3.htm
*「住宅の窓・ベランダから子供が墜落する事故に注意!」(東京消防庁)
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/topics/201603/veranda.html
*「高層マンションに潜む数々のリスクと居住階ごとの衝撃データ」(NEWSポストセブン/小学館)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170630-00000007-pseven-soci
*「本当は怖いタワーマンション!?絶景眺望の落とし穴『高層階症候群』とは?」(Asagei plus (株)徳間書店)
http://www.asagei.com/excerpt/81021
*「高所“平気”症の子供たちが急増中? 高層マンション暮らしで怖さ薄れ…転落事故も続々と」(産経ニュース)
http://www.sankei.com/premium/news/151019/prm1510190003-n1.html