プラスコラム
PLUS COLUMN

恋愛ドキドキモードは、1年半が限界?

彼のことを考えるだけで胸がキュンキュン熱くなる・・。前回は、恋の初期は、さかんに放出される快楽ホルモンのドーパミンなどのおかげで、恋心 が盛り上がるというお話でした。恋愛当初は「好きで好きでたまらない。毎日、毎晩でもあの人と会いたい!!」という熱烈な感情も、やがては冷めていくとき がきます。そのとき、どんな作用が働いているのでしょうか? 今回はラブラブ期間の賞味期限についてのお話です。

 

人熱愛感情はからだにこたえる?

熱愛感情はなぜ永遠に続かないのか――その理由を、アメリカの人類学者ヘレン・フィッシャー博士は、脳内物質・ドーパミンが体にかける負担が大きいからだと分析しています。
ドーパミンは脳を興奮させる物質のひとつで、脳の興奮によりもたらされるのが「快感」という感情。ドーパミンによって幸せな興奮を得られるから、「もっと」「もっと」とさらなる欲望がわいてくるのです。

「彼のことをもっと知りたい」「彼ともっと一緒にいたい」――熱愛当初のあの狂おしいような気持ちは、ドーパミンによるものだったのですね。
熱愛中の興奮状態に深くかかわっているドーパミン。その量が多ければ多いほど人生はもっと楽しく彩られるような気がしますが、「何事も過ぎたるは及ばざるがごとし」という言葉があるように、多ければよいというものではありません。
 

燃える恋心は「依存症」と同じしくみ?

そもそもアルコールやタバコ、ギャンブル、ゲーム、買い物などの依存症はドーパミンの暴走が原因で起こるといわれています。
楽しいと感じると脳内でドーパミンが出てきます。これによって快感を得られた記憶が脳に刻み込まれて、再び快感を得るためにもっとしたくなる――自分でもやめたいのにやめられないのが依存症なのです。

また、ドーパミンが過剰になると食欲がなくなったり、からだの震えや幻聴・幻覚が起こってきます。興奮状態から攻撃的になるといわれています。
ちなみに、麻薬はこのドーパミンをどんどん出させる働きをしているそうなのです。そういえば、麻薬中毒者が幻想や幻覚をみるという話はよく聞きますね。

麻 薬中毒ほどではないにしても、好きな人のためには、眠気もなくなり食欲も落ちて仕事も手につかなくなる――ドーパミンの分泌オーバーのときは、精神的も肉 体的にも正常とはいえない状態になってしまいます。からだへの負担が大きいために、長続きしない。恋愛当初にあんなに多く分泌されていたドーパミンも、時 間とともに徐々に分泌量が減って、燃え上がっていた恋心も徐々に沈静化していくようです。 
 

熱愛期間は意外と短期間

熱愛期間は人により個人差はありますが、海外での研究では、1年~1年半で終わるという調査結果が出ているそうです。
「あれ? この人、こんな面があったの」と相手の欠点が見えはじめ、「この人で本当にいいの?」と迷い始めるのも、ちょうどこのころなのかもしれません。

しかし、恋の沈静化という1つの試練を乗りきることができれば、次の恋愛ステージに行くことができます。それが「愛情」や「愛着」という安定した関係でつながること。愛情をはぐくんで、結婚に結びつくカップルも多いこととでしょう。
そしてようやく結婚したカップルのそれからは、どうなるのでしょう。
それは、また次の機会のお話で。



<参考資料>
『人はなぜ恋に落ちるのか』(ヴィレッジ・ブックス:ヘレン・フィッシャー)
『愛はなぜ終わるのか』(草思社:ヘレン・E・フィッシャー)

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。