プラスコラム
PLUS COLUMN

人には言えないお尻のかゆみ。洗いすぎがかゆみを招く

突然ですが、みなさんはシャワー式トイレでお尻を洗うとき、「弱」から「強」まである洗浄の強さをどの段階にして使っていますか? 「清潔第一」とばかり思い切り洗浄を「強」にして念入りにお尻を洗っている人もいるのではないでしょうか。でも知りたくなかったかもしれませんが、清潔好きゆえに行っているその行為、ホントはお尻のかゆみを招く行為だったのです。

 

お尻の洗いすぎで、かぶれが起こる?

人には言いにくい悩みのひとつに「お尻のかゆみ」があります。
医学的には、お尻に慢性的なかゆみがあることを「肛門掻痒症(こうもんそうようしょう)」といいます。
かゆみの原因はさまざまです。たとえば痔の病気があり、その分泌物で肛門の周囲が刺激されたり、カンジダによる菌の感染などが原因で強いかゆみが起こったりしますが、そのほかの原因としてあげられるのが、なんとお尻の洗いすぎなのだそうです。

「お尻だって洗ってほしい」――1982年、刺激的なテレビコマーシャルで世の中に登場したシャワー式トイレですが、今や日本のトイレには欠かせない必需品になっています。肛門掻痒症は、そのシャワー式トイレの普及にともなって、年齢・性別に関係なく増えてきている病気だといわれています。
排便後はお尻の清潔を保つために、シャワー式トイレの強い水圧で洗ったり、トイレットペーパーで強くこすったり。また、不潔なところだからと入浴時には石けんでゴシゴシ洗ったり……清潔好きの人ほどお尻を入念に洗う傾向があるようです。

けれども、専門家によると、こうした洗いすぎが肛門周辺の皮膚のバリアを壊してしまい、お尻が乾燥してガサガサ・ボロボロに。そこに便や菌が付着して、かぶれなどの炎症を起こしてかゆみが起こると指摘します。
とくにお風呂上りや就寝中などからだが温まったときは、肛門周辺の皮膚がムズムズしてかゆみが増します。こんなときはつい指で掻いてしまいがちですが、掻き傷をつくることでよけいに症状が悪化してかゆみがひどくなるので気をつけて。
また、お尻がかゆいときは、とくに念入りにお尻を洗いたくなりますが、洗いすぎがよけいにかぶれをひどくして症状を悪化させます。

かゆみが気になるときは、がまんしないで肛門科や内科などを受診することをおすすめします。肛門科の受診は、女性にとっては恥ずかしくハードルが高く感じられますが、最近は、女医さんによる女性専門外来も増えてきました。インターネットで検索して最寄りの肛門科を探してみましょう。

いずれにしても、肛門周囲にはたくさんの血管が集まっていて非常にデリケートな部分だといわれています。皮膚粘膜も薄いので、「掻かない」「こすりすぎない」「洗いすぎない」ように注意を。お尻の清潔は必要ですが、何事も「やりすぎない」ことが大事なようです。

 

<参考図書>
『産後ママの体と心 トラブル解消BOOK』(NHK出版:対馬ルリ子)

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。