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健診の心電図で「所見あり」……放っておいていい?

健診結果の心電図の欄に「期外収縮」「右脚ブロック」といった見慣れない言葉と「所見あり」が並び、戸惑ったことはありませんか?症状は何もないのに、放っておいていいのか迷う方は少なくありません。

 

今回は、様子を見てよいことが多い所見と、医療機関で相談したい所見の目安について紹介します。

 

多くは経過観察|決め手は判定区分と症状

結論からいうと、健診の心電図で指摘される所見の多くは、経過観察でよいものです。放っておいていいかどうかは所見の名前だけでは決まらず、「判定区分」「症状の有無」「持病や家族歴」の3つを軸に判断します。

 

厚生労働省の集計では、2024(令和6)年の定期健康診断で心電図に所見があった方は受診者の10.9%、およそ10人に1人でした。所見が指摘される割合は、40歳を過ぎたころから高くなる傾向があります。

 

判定区分は健診機関で表記が異なりますが、日本人間ドック・予防医療学会のマニュアルでは次のように分けられています。

 

判定区分の目安

・A:異常(所見)なし

・B:軽度異常

・C:要再検査・生活改善

・D:要精密検査・治療

・E:治療中

 

Bは軽い異常で、症状がなければ次回の健診まで様子を見ることが多い区分です。Cは指定された時期に再検査を受けることが前提です。Dが付いていれば、症状がなくても医療機関で詳しい検査を受けましょう。Dは「重い心臓病」という意味ではなく、詳しく調べる必要があるという区分です。

 

心電図でわかるのは「心臓の電気の流れ」

心臓は、右心房にある洞結節(どうけっせつ)という発電所から規則正しく電気が発生し、房室結節(ぼうしつけっせつ)という中継所を通って心室に伝わることで拍動しています。心電図は、この電気の流れを体の表面から波形として記録する検査です。

 

波形からは、拍動のリズムの乱れ(不整脈)、電気の通り道の障害(ブロック)、心臓の筋肉への負担や血流不足の疑いなどの手がかりが得られます。

 

ただし健診の安静時心電図は10秒ほどの記録で、その瞬間に出ていない不整脈はとらえられません。健診で異常なしでも、動悸や脈の乱れを感じるときは医療機関に相談しましょう。

 

様子見でよい所見……期外収縮・洞性不整脈など

(1)期外収縮

健診で最もよく指摘される不整脈です。洞結節以外の場所から通常より早いタイミングで電気が出るため、脈が一拍飛んだように感じます。

 

心臓に病気がなく症状もなければ、治療が必要になることはほとんどありません。睡眠不足やストレス、疲労、カフェインやアルコールのとりすぎで増えることが知られています。

 

(2)洞性不整脈

心臓のリズム自体は正常で、拍と拍の間隔がわずかに不規則になっている状態です。若い方によくみられる現象で、病気ではありません。

 

(3)右脚ブロック

心室に電気を伝える「電線」のうち、右側の通りが悪くなっている状態です。右脚は左脚より細く障害が起こりやすいとされ、健康な方にも数%にみられ、多くは治療を必要としません。左側が伝わりにくい「左脚ブロック」は心臓病を伴うことが多く、こちらは検査が必要です。

 

見逃したくない!受診したい所見と危険サイン

判定がD(要精密検査・治療)になる代表的な所見には、心房細動と完全左脚ブロックがあります。ST低下や異常Q波(心臓の血流不足の疑い)、頻発したり連発したりする期外収縮も、症状や高血圧などの危険因子があればDになります。

 

なかでも心房細動は、心房が細かく震えて脈が不規則に打つ不整脈です。約半数は無症状とされています。心房の中に血の塊(血栓)ができて脳梗塞を起こすおそれがあるため、指摘されたら循環器内科を受診しましょう。

 

期外収縮のような様子見でよい所見でも、次に当てはまる方は一度検査を受けておくことをおすすめします。

 

受診をおすすめするケース

・心筋梗塞や弁膜症、心筋症などの心臓病、または高血圧・糖尿病・脂質異常症がある

・動悸、息切れ、胸の痛み、めまいや失神、目の前が暗くなる感覚がある

・家族に若くして突然死した方がいる

 

特に失神や目の前が暗くなる感覚は、重い不整脈が隠れている場合があります。早めに循環器内科に相談しましょう。

 

受診先と精密検査、日常でできること

受診先は循環器内科です。過去分も含めた健診結果票と、症状が出る場面のメモを持参しましょう。精密検査では、主に心臓超音波(エコー)検査と、24時間記録するホルター心電図を行います。これらは一般的なクリニックでも受けられる場合があります。

 

検査で心臓病がなければ、期外収縮や右脚ブロックがあっても日常生活に特別な制限はありません。

 

日常では、手首で脈をとる「検脈」を習慣にしましょう。期外収縮は睡眠不足や疲れた日に出やすいとされるため、脈の乱れを生活を見直すきっかけにするのもよいでしょう。所見名に驚かず、判定区分と症状で落ち着いて判断し、要精密検査は先延ばしにしないことが大切です。

 

<参考>

※「不整脈」(循環器病について知る・病気について/国立循環器病研究センター)

※「不整脈とは」「期外収縮とは」(心臓病の知識 疾患別解説/公益財団法人日本心臓財団)

※「健診で『心室性期外収縮』を毎年指摘されます…」「健診で『右脚ブロック』を指摘されました…」(心臓の病気の知恵袋/一般社団法人日本循環器協会)

※「標準12誘導心電図検診判定マニュアル(2023年度版)」(日本人間ドック・予防医療学会)

※「新版!不整脈ってなあに?」(市民の皆様へ/一般社団法人日本不整脈心電学会)

※「定期健康診断結果報告 令和6年定期健康診断実施結果(年次別)」(厚生労働省)

※「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会 報告書」(厚生労働省)

 

プロフィール

医療ライター/登録販売者
岡本 美紗子

*調剤薬局で医療事務として15年間勤務し、処方箋やレセプトの業務、OTC医薬品の販売に携わる。

*2017年に登録販売者を取得。

*現在はWebライターとして、医療・健康・保険分野を中心に執筆。

*現場での経験を活かし、専門的な内容を日々の暮らしに役立つ形でわかりやすくご提供。