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働き盛りの人も要注意の「勤労者ロコモ」とは?

高齢者の働く人が増えているといいます。それにともなって仕事中に転んだり、骨折したりといった「ロコモ」によると思われる事故に注意が必要とも。「ロコモ」は働く人である「勤労者」にも広がりつつあるようです。

 

働くシニアと「勤労者ロコモ」の関係

ふだんはそれほど頻繁に聞いたり見たりすることは少ないのですが、「勤労者ロコモ」という言葉が広まりつつあるようです。

文字通り「勤労者」の「ロコモ」ということですが、背景にはシニア世代の働く人が増加傾向にあることと無縁ではないようです。

シニアの勤労者の職場での転倒や骨折が増えていることもあいまって、日本整形外科学会の提唱で「勤労者ロコモ」という呼称が生まれたといいます。

人手不足という雇用状況も背景に、シニア世代の就業率は10年ほど前から上昇傾向が続いているといいます。

 総務省統計局の労働力調査(令和5年)によると65~69歳の就業率は53.5%。この年齢層の半数以上が働いていることになります。

その上の世代の70~74歳では34.5%、75歳以上でも11.5%を占め、高齢者が元気に働いている光景は、今では特段、めずらしくありません。

 

「ロコモ認知度」が低い40~50歳代

 日本整形外科学会によれば、「高年齢者の労働参加率が上昇するとともに、転倒や骨折が年々増加」しているといいます。

個人差はありますが筋力の衰えやバランス能力の低下は、年齢を重ねるごとに顕著になっていきます。

「ロコモ」は、そうした高齢者に特有の問題としてとらえられがちでしたが、近年、40歳代、50歳代の中堅世代でも「ロコモ」の傾向がみられるというのです。

自分では気づかないうちに、ロコモは世代を超えて密かに忍び寄ってくるといっていいかもしれません。そもそも「ロコモ」に対する認知度が、偶然にもこの40~50歳代で低い傾向がみられます。

日本整形外科学会の「ロコモ認知度調査(2025年)」によれば、たとえば40歳代の認知度が男性で35%、女性で36%。50歳代では男性33%、女性47%です。いずれも5割に届きません。60歳代では女性が57%なのに対して男性は37%。20歳~70歳以上の世代全体でも、認知度が42%はあるのに……です。

 

「ロコモ」は40歳代でも安心できない

 そもそも「ロコモ」とは、ご存知のように「ロコモティブシンドローム」の略称で、日本整形外科学会によって提唱されました。「骨や筋肉などの運動器の働きが衰えて、立ったり歩いたり、作業したりといった体の機能が低下した状態」のことをあらわします。

 そんな「ロコモ」が働き盛りの40~50歳代からすでに「始まっている」と専門家は指摘しています。

ある大規模調査によれば、ロコモが「始まっている」(ロコモ度1)状態の人が、すでに40歳代未満の男女の2割以上にみられ、年齢が上がるとともにその割合が上昇。40歳代の男性で約3割、女性の約4割、さらに50歳代では男女ともに約4割が、60歳代では男女のなんと5割以上が「始まっている」に該当したといいます。

また、ロコモが「進行」している状態(ロコモ度2)は、すでに40歳代男女に若干程度みられ、加齢とともにその割合は高くなり、60歳代では男女の1割前後の人がロコモの進行状態にあるといいます。

 

 

毎日の運動習慣など、早めの対策を!

「ロコモ」が怖いのは、進行すると骨や筋肉、関節、神経など運動に関わる体のメカニズムがうまく機能しなくなり、立つ、歩くといった基本的な運動能力が低下してしまうことです。バランスをくずして転倒したり、それによって骨折したりといったリスクも高まるといいます。

 結果として将来、寝たきりの生活を余儀なくされることもあるのです。

 それを予防するには40~50歳代のうちから適度な運動をして「体幹の筋肉の減少を抑えること」だといいます。そのためには週に900kcal以上、歩行に置き換えると毎日45分以上の運動が重要だということです。

さらには肥満や糖尿病など生活習慣病の予防、禁煙、節酒などもロコモ対策には大切だとも。栄養バランスが取れた毎日の食事なども必須です。

 日本整形外科学会などがロコモ判定のために作成した「ロコモ度テスト」というのがあります。脚の筋力や歩幅、体の状態や生活状況をもとにロコモの進行の程度を調べるものです。日本整形外科学会公式サイト『ロコモ ONLINE』で詳しく解説しています。

また、厚生労働省のWebサイト『健康寿命をのばそう SMART LIFE PROJECT~ロコモをご存知ですか?』でもご自身のロコモ度をチェックすることができます。

「ロコモ対策」は早めに始めるのが大切。ぜひ参考にしてください。

 

<参考>

*「毎日かんたん! ロコモ予防」(厚生労働省/健康日本21アクション支援システム)

*「勤労者ロコモの実態と対応」(けんぽれん[健康保険組合連合会])

*「ロコモパンフレット2025年度版 ロコモ」(公益財団法人 日本整形外科学会)

*「働くシニア増 転倒の労災増 足腰衰えるロコモ注意」(東京新聞/2025.11.18)

*「ロコモをご存知ですか?~ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト」「ロコモ認知度調査結果」「テーマポスター『勤労者ロコモ問題』」(公益社団法人 日本整形外科学会)

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。