
脳細胞は死ぬまでつくられ続ける?
脳の老化は30代くらいからはじまるといわれます。
その一方、脳細胞は生涯、新しくつくられ続けるとも。
ふだんの生活習慣とも密接にかかわっている脳の老化ですが、どんなことに気をつければいいのでしょうか?
1日に失われる脳細胞は約10万個?
脳は私たちの生命活動をコントロールし、体の司令塔ともいわれます。重さは体重の2%ほど。
大人の場合で1,200~1,400グラム程度といいます。
歳をとるにつれて脳は老化し、脳の神経細胞が収縮したり失われたりして、30歳代くらいから脳の萎縮がはじまるといわれています。
脳の中では1日におよそ10万個もの神経細胞が失われているそうです。年齢を経るごとに脳が小さくなっていく理由の1つにもあげられています。
ただ、脳全体で百数十億個を超える神経細胞があるそうですから、全部なくなるまでには数百年もかかる計算になり、生きている今から神経細胞がなくなることを心配するのはあまり現実的ではありません。
脳細胞は死ぬまで再生し続ける?
「一度、死んでしまった脳の細胞はもとに戻らない」と、よくいわれます。「歳をとると脳は衰えるばかり」と嘆く人も多くいらっしゃいます。
確かに加齢とともに神経細胞は減り続けるのですが、経験や知識によって神経細胞は新しく突起を伸ばし、ほかの神経細胞と新しいネットワークをつくっていくそうです。
それは高齢になっても変わらないといいます。
さらに近年の研究で、成人した後でも脳の一部(海馬=記憶の中枢)で新しい神経細胞が生まれることが明らかにされたそうです。高齢の人でも生活習慣の改善などによって、脳が刺激を受けると活性化して神経細胞が新しく生まれるといいます。
「神経細胞は胎児や成長の初期に分裂・増殖して完成した後は、新しく分裂・増殖できない」というそれまでの常識をくつがえしたといわれます。
ジョギングやウォーキングが脳細胞を再生する?
とはいえ脳の老化は多くの人にとって無縁ではありません。
脳の萎縮、老化を進行させる要因には、加齢以外に飲酒、喫煙、脳血管疾患などが報告されています。ほかにも運動不足や睡眠不足、過度なストレス、乱れた食生活、社会的孤立などとの関連がいわれています。
脳の老化を防ぐにはどうすればいいのでしょう?
国立長寿医療研究センターの調査によると、男性では「(現在)タバコを吸わないことや就労を含む社会参加がある」こと、女性では「バランスの良い食事を心がける」ことが、脳の老化予防と強く関連していることがわかったといいます。
また、ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動は脳の萎縮を完全に止めることは難しいとはいえ、萎縮のスピードを抑制できるとしています。
「体の機能と脳の機能は相関関係がある」といった指摘もあるように、運動こそ神経細胞を新しくつくるカギだともいわれています。
運動以外にも趣味や好奇心、社会との関わり、質の良い睡眠、栄養バランスのとれた食事などがいわれています。幸福感も大切だそうです。
脳を有害物質から守る「血液脳関門」
そんな脳を動かすエネルギーとなるのがブドウ糖です。
脳は摂取した全エネルギーの約25%も消費する「大食漢」でもあります。
朝、食事を抜いたりすると脳はエネルギー不足に陥り、疲労感や倦怠感、頭がボーッとするなど、仕事や勉強など日常生活にさまざまな支障が出ることがあります。
脳はブドウ糖などの栄養素を脳の毛細血管にある「血液脳関門」を通して取り込んでいます。血液脳関門には有害物質が脳に入り込まないようにするバリア機能があり、物質の取り込みを制限しているといいます。
ブドウ糖以外にはアミノ酸や酸素、グルコースなど、選ばれた物質だけが血液脳関門を通ることができます。
薬はどうか?
残念ながら脳によいとされる薬を血液中に投与しても血液脳関門を通過できないといいます。
一方、摂取の仕方によっては健康に有害といわれるニコチンやアルコール、カフェインは皮肉なことに、この脳のバリア機能を通過できてしまいます。
これらの物質は血液脳関門の機能の低下や脳の老化にも関係しているといわれます。どれも過剰な摂取は控えた方がよさそうです。
<参考>
*「脳の形態の変化」(公益財団法人 長寿科学振興財団)
*「動くことは脳を鍛えること」「良い生活習慣と脳の老化【認知症予防】」(国立長寿医療研究センター)
*「脳の老化を防ぐ!食から考える脳の健康」(大正製薬株式会社)
*「持続的なストレスによって血液脳関門の機能が低下する新たなメカニズムを発見」(国立精神・神経医療研究センター)
*「たんぱく質ヘルスケアコラム/脳も老化する?脳の老化を防ぐ生活習慣と最新の科学研究から見た予防策」(株式会社鈴廣蒲鉾本店)