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塩分の7割は「調味料」から摂っている?

塩は生命の維持に欠かせないといわれる一方、摂りすぎは健康を害するともいわれます。塩分の何がよくて、何がいけないのでしょう? 塩分の摂取量を減らすには、どんなことに気をつければいいのでしょうか? 

 

血液などにも塩分が含まれている? 

「人間は塩がないと生きていけない」とよくいわれます。 

数十億年前に海の中で生まれた生命体が起源とされる人類。その体液(血液など)には塩分が含まれています。体液の塩分濃度は約0.9%といわれます。これはどんなときも0.9%と決まっているのだそうです。生理食塩水の塩分濃度が0.9%と定義されているのもこうした理由からだそうです。 

ちなみに体内の塩分量ですが、大人の場合は体重の0.3〜0.4%、子どもでは体重の約0.2%といわれています。 

 

人間は塩がないと生きていけない? 

 塩は必須ミネラルのナトリウムを多く含んでいます。ナトリウムは体内で作ることができず、主に塩から摂取するしか方法はないといいます。人間が本能的に塩を好むといわれるのはそんなことが理由かもしれません。 

 また、塩は食べ物の味をととのえ、食欲や味覚とも深い関連があります。「しょっぱい」だけでなく、「おいしい」と感じたりもします。たとえばスイカやお汁粉に塩をかけると甘味が強調されたり(対比効果)、酢の物に塩を加えると酸味が抑えられる(抑制効果)、出汁にも塩を加えるとうま味が引き立つなど、塩は「おいしさ」「うま味」の演出に効果を発揮します。 

 

塩分の何がいけないのか 

 ただ困ったことに塩味は、その「おいしさ」のために、つい摂りすぎて 

しまいがちでもあります。 

 塩分の摂りすぎでよく知られているのは血圧の上昇です。これは塩分のせいで血液の塩分濃度が上がり、それを下げるために血管内に水分を取り込むことで血液量が増え、血管にかかる圧力が高くなるからといいます。 

 しょっぱいものを食べると喉が乾くのはこのためです。 

塩分の摂りすぎが続くと血圧の上昇によって血管が傷み、脳卒中や心血管疾患、腎臓病などの発症リスクになることは広く知られています。 

 

塩分の7割は「調味料」から摂取? 

 厚生労働省の「国民健康・栄養調査(2016年)」によると、日本人のおよそ7割、66.7%は塩分を調味料から摂っているといわれます。 

特にしょう油(18.2%)と塩(12.1%)、みそ(12.1%)からその多くを摂取しています。大さじ1杯(15ml)の薄口しょう油(2.9g)には濃口しょう油(2.6g)よりも塩分量が多く含まれています。 

他に、みそは約2g、ウスターソースは1.5g、マヨネーズは塩分が少なくて0.3g、顆粒だしは3.9gと意外に塩分が多いです。めんつゆ(ストレート)は0.5gで、しょう油より少なめです(いずれも大さじ1杯当たり)。 

  

カップめん1杯で1日の塩分の8割? 

 私たちがふだんよく食べる食品の中で1日当たりの塩分摂取がいちばん多いのはカップめんだそうです。その塩分摂取量は5.5g。インスタントラーメンは2番目で5.4gでした(国民健康・栄養調査/2016年)。 

カップめんやインスタントラーメンの塩分は、それだけで厚労省の定める1日当たりの目標値7.0gの約8割にもなります。 

 血圧は高齢になって急に上がるものではなく、若い時期から塩分を控え目にすれば高血圧を抑えることができるようです。たとえば35歳の男性が1日当たり14gの塩分を摂り続けると、30年後には高血圧のレベルに達しますが、1日7gだと30年後でも血圧の上昇を抑制できるといいます。 

 

塩分の摂取量を減らすポイントは 

 

 減塩は予防の段階なら「気をつける」程度でいいそうです。 

例えばラーメンを食べるときは、スープを半分残すだけで塩分の摂取量を2〜3g減らせるそうです。ソバやうどんなどのめん類も同様です。 

また調味料は「かける」より「つける」が大切。冷奴やトンカツ、サラダを食べるときは、しょう油、ソース、ドレッシングなどは別の小皿に入れて付けたり、ポン酢や減塩しょう油、レモンやお酢を使う方法も。 

 カップ麺やハム、練り物などの加工食品には塩分が多く含まれます。購入するときは「栄養成分表示」で食塩相当量を確認することも忘れずに。 

 

<参考> 

*「塩百科〜塩味〜」(公益財団法人 塩事業センター) 

*「塩について学ぶ」(一般社団法人 日本塩協会) 

*「減塩社会への道」(消費者庁) 

*「あの手この手で減塩を」(東京新聞/2024.6.5) 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。