
伝統の和菓子「羊羹」が熱い?
なにやらスポーツアスリートなどを中心にひそかに人気の和菓子があるようです。日本古来のスィーツである「羊羹(ようかん)」がそれ。
古くて新しい羊羹の魅力をさぐってみました。
羊羹はスポーツのさまざまなシーンで活躍?
仕事で疲れたときや、ちょっとした息抜きのおやつにスイーツを食べる人は多いでしょう。
クッキー? ドーナッツ? それともショートケーキ……?
スイーツといえば、ついそんな派手な洋菓子を連想しがちですが、まんじゅうやどら焼き、団子などの和菓子も地味な存在ながらスイーツとして健気にがんばっています。
そんななかにあって最近は羊羹がジワジワと人気を得てきているようです。
とくにランニングやジョギング、ウォーキングをはじめ、さまざまなスポーツシーンで羊羹がエネルギー補給用の食べ物として活躍していると聞きます。
和菓子の老舗井村屋の「スポーツようかん」というコンパクトな商品も人気といいます。
オリンピック競技のアスリートが競技前や競技中に羊羹を食べたり、さらには宇宙食として羊羹が活用されているといった話もあるようです。
最近では羊羹が歌にもなっています。
疲れたときの「羊羹」で体も脳も疲労回復?
そんなアスリートやスポーツ愛好家をはじめ、山歩きやジョギング、散歩が趣味の人など、多方面から羊羹が愛される理由はなんでしょう?
よくいわれるのは「効率的なエネルギーの補給」です。
羊羹の原料は、小豆に砂糖、寒天ですが、なかでも砂糖は、おにぎりやパンなど炭水化物を含む他の食べ物よりも消化の過程が少なく、速攻で効率的なエネルギー供給ができるといいます。
「砂糖は疲労回復に効く」とよくいわれます。疲労はエネルギーの消費によって血糖値が低下した状態。
甘いものを食べると、それによって血糖値が上がり、さらに運動して失われた筋肉中のグリコーゲンが補充されるので、疲労した体がリフレッシュされるといいます。
また糖質は脳の重要な栄養源でもあることから、羊羹は集中力や持続力が大切な受験生に人気のおやつともいわれます。
羊羹の魅力は高い栄養価と低脂肪?
羊羹を「ただの甘いお菓子」といった印象でとらえるのは早計かもしれません。
羊羹も含めた和菓子全般にいえることかも知れませんが、洋菓子に比べて脂質量が目立って少なく、低カロリーなことが大きな特徴です。
大まかな比較ですが、例えば、コンビニなどで売っているコンパクトサイズの羊羹(約58g)のカロリーは約160kcalに対して、ショートケーキ1個(約120g)のカロリーは約360kcal。
脂質は羊羹が約0.4gなのに対してケーキは約15gもあります。
他のスイーツについてもおおむね然りで、カロリーや脂質などの洋高和低の傾向は大きく変わらないようです。
また羊羹の主原料の小豆には食物繊維の他にタンパク質やビタミン、ポリフェノール、ミネラルなどが含まれていて、甘いだけじゃない羊羹の健康的な一面がうかがえます。
ただ、食べ過ぎはそうした利点を台無しにしますので注意が必要です。
羊羹のルーツは羊のスープ?
それにしても「ようかん」は、なぜ漢字で「羊の羹」と書くのでしょう?
「羹」の字は「あつもの」とも読み、野菜や肉などを入れた熱い汁物のことで、中国料理の「羊のスープ」が羊羹のルーツだそうです。
日本に伝わったとされる14~15世紀頃は、精進料理として羊の肉ではなく小豆を使うようになり、時代が下るにつれて料理としての羊羹は、お菓子へと進化したということのようです。
主に小豆と砂糖と寒天のたった3つの材料で作られた、とてもシンプルで飾り気のない、のっぺりとした、四角四面の羊羹ですが、その中には数百年という悠久の時間と歴史が練り込まれていたのでした。
<参考>
*「砂糖の栄養」「運動と砂糖」(独立行政法人 農畜産業振興機構)
*「オリンピック選手も食べる羊羹の秘密」(株式会社山田老舗)
*「羊羹の起源は羊肉のスープ。寒天と小豆で作る羊羹が発明されるまで」(日本あんこ協会)
*「羊羹のルーツは中国の“羊スープ”だった!」(家庭画報,com)
*「井村屋 スポーツようかん」(井村屋株式会社)
*「日本食品標準成分表(八訂)」(文部科学省)