音や匂いなどに過剰に反応する「感覚過敏」って?
「街の騒音で体調が悪くなる」「衣類の柔軟剤の匂いで気分が悪くなる」など、聴覚や視覚、嗅覚などの刺激に敏感に反応する「感覚過敏」の人がいるといいます。どういうものでしょうか?
匂いや音、感触に敏感な「感覚過敏」とは?
わたしたちが日々生活している日常空間は、種々雑多な音や光、匂い、触感などであふれかえっています。
ほとんどの人はなんとか折り合いをつけて生活していますが、なかにはこうした様々な刺激に敏感な人たちがいるといいます。
「感覚過敏」というそうです。
「聴覚」「視覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」といった、私たちが持っている五感を通した刺激に過剰に反応してしまうといいます。
「感覚過敏」は病気ではなく、刺激に対して「脳が過大に解釈」して起こる症状といわれています。
「感覚過敏」はどのようにあらわれる?
感覚過敏は、どのように体にあらわれるのでしょうか?
人によって症状は様々でしょうが、主なものとして次のようなものがあるといいます。
視覚過敏:太陽光や室内灯、パソコン、スマホの画面の光がまぶしくて苦痛、気分が悪くなる。特定の色や形、柄などが苦手など。
聴覚過敏:時計の秒針の音やエアコン、そうじ機の動作音などがつらい。混雑している店などのガヤガヤした音が苦手、大きな音が苦痛など。
味覚過敏:特定の味覚や食感を嫌う傾向がある。味に敏感で、食べられるものが少なく、偏食の傾向があるなど。
嗅覚過敏:電車内での体臭や香水、化粧品、衣類などの匂いが苦手で気分が悪くなる。衣類の柔軟剤やトイレの芳香剤の匂いが苦痛で気分が悪くなる。車の排気ガスや飲食店からの食べ物の匂いが苦手など。
触覚過敏:衣類のタグや縫い目に痛みや不快を感じる。ヌルヌルやネバネバなど特定の触感が苦手。雨や風に当たると痛みや不快感。人に触られることが苦手など。
こうした五感以外にも「平衡感覚」や「温度感覚」などの感覚過敏もみられるようです。例えば、温度過敏で熱さに敏感なために、ぬるいお風呂にしか入れない、冷たい水が痛く感じて冷水で手を洗うのが苦痛、平衡感覚が過敏だと、少しの傾きで気持ち悪くなり乗り物に酔いやすいなどです。
「感覚過敏」の人の割合は?
こうした感覚過敏の症状を持つ人がどのくらいいるのか正確には分かっていないようで、数十万人とも数百万人とも推定されています。
東京学芸大学が行なった調査(分析対象・大学1年生274人/2020年6月実施)によると、視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚(または偏食)などの感覚過敏があると回答した人の割合は全体の36%を占めたといいます。
また「周囲に感覚過敏の人がいる」と回答したのは全体の23%でした。
けっして「めずらしい」とか、「まれ」な症状ではないことが分かります。
感覚過敏の原因については発達障害との関連がいわれていますが、大人の感覚過敏については、突発性難聴やメニエール病、緑内障や白内障などの耳や目の病気で感覚過敏が誘発されることもあるようです。
また不安やストレス、うつなども要因として指摘されています。
「感覚過敏」への対応が広まりつつある?
そんな中、感覚過敏の人に配慮する取り組みが広がっているようです。
例えば、スーパーやショッピングモール、家電量販店など、商業施設の一部では「クワイエットアワー(Quiet Hour)」を設けて、日時を限って店内のBGMや館内放送を止めたり、照明を落として通常より暗くするなど、刺激を軽減する配慮をしているといいます。
また、視覚や聴覚の感覚過敏の人のために、音や光などの刺激を少なくした中で観戦できるセンサリールーム(Sensory Room)を設けたスポーツ施設や教育施設なども増えつつあるようです。
さらには肌への刺激が少ない衣料の開発なども進んでいるようです。
感覚は、鋭い人がいれば鈍い人もいます。それぞれ個性があります。多様性がいわれる今、こうした試みがもっと広がっていくといいですね。
<参考>
*「感覚過敏とは?」(感覚過敏研究所)
*「感覚過敏のある人の対する優しい社会環境づくり」(埼玉県)
*「感覚過敏・感覚鈍麻とは」(武田薬品工業株式会社)
*「感覚過敏とその支援に関する大学生の認識に関する調査」(東京学芸大学教育実践研究 第17集 2021)
*「感覚過敏でもエンタテインメントをあきらめない」(Cocotame-ソニーミュージックグループ)