「命の回数券」ってなんだ?
「回数券」といえば、バスや電車などで利用できる割引き乗車券のこと。
現在はほとんどの交通機関で廃止になってしまったようですが、人間の体にも回数券があるようです。
「命の回数券」とも呼ばれるその正体は?
「命の回数券」は染色体にくっついている?
私たちの体は、およそ37兆個ともいわれる膨大な数の細胞で構成されています。細胞には染色体があり、その中にはDNAと呼ばれる人間の設計図のようなものが組み込まれているといいます。
細胞は絶えず細胞分裂を繰り返して、古い細胞から新しい細胞へと入れ替わっています。
ところが細胞分裂はいつも正確に前の細胞の完全なコピーができるわけではないそうで、染色体が傷つくリスクもあるようです。
そうしたことから遺伝子を守るために働くのが「テロメア」といわれています。
テロメアは染色体の両端にあって、染色体が擦り減らないように厳重に保護しているそうです。
テロメアがなくなると細胞は死滅してしまうといわれます。
細胞分裂のたびにテロメアは短くなる?
テロメアは細胞が分裂するたびに短くなり、テロメアが元の長さの半分くらいになると細胞分裂ができなくなるといわれます。
それ以上分裂ができなくなった古い細胞はそのまま残ってしまいます。これが老化細胞といわれるものです。 細胞が老化すると、シワ、シミといった肌の老化や動脈硬化などの生活習慣病にかかりやすくなるといわれます。
テロメアは、回数に限りがある細胞分裂や老化細胞と深い関係にあることから「命の回数券」とか「老化の回数券」などと呼ばれているようです。
赤ちゃんのテロメアは長く、高齢になると短いといわれます。
テロメアが長いと長生きできる?
テロメアの長さは生物の種によってさまざまだそうです。
単純にテロメアが長いからといって、長生きできるということにはならないようです。
例えばマウスのテロメアは人間の10倍も長いにもかかわらず、マウスの寿命は3年にすぎないといわれています。
テロメアの長さは加齢によって変化しますが生活習慣などによる個人差も大きいといわれ、同じ年齢でもテロメアの長さが同じではないようです。
一般にテロメアが短い人は動脈硬化や心疾患、脳血管疾患、がんなどの罹患リスクが高いといったこともいわれています。
では、テロメアが短くなるのを遅らせれば長寿は可能でしょうか?
テロメアは寿命に関与している?
テロメアが短くなる原因には、加齢に加えて喫煙や肥満、運動不足、睡眠不足、ストレスなどがいわれます。
これらによって細胞分裂が急速になると、テロメアの短縮スピードがアップするともいいます。
ジャンクフードを習慣的に食べることもテロメアを短くするそうです。
ということは、加齢は避けられませんがテロメアを短くするといわれる要因とは逆のことをすれば、テロメアの短縮を遅らすことができる……?
よくいわれるのは、毎日の運動習慣、1日およそ7時間の良質な睡眠、肥満の解消、ストレスを溜め込まない、もちろん禁煙、栄養バランスのとれた食生活……やはりここでも規則正しい生活習慣が重要なようです。
テロメアをむだ使いしないで、健康寿命を手に入れたいですね。
<参考>
*「クローン羊は短命?“テロメア”ってなんですか?」(東京都健康長寿医療センター研究所)
*「テロメアをめぐる話」(東邦大学 メディアネットセンター)
*「『命の回数券』テロメアを守れ カギ握るは運動や睡眠」(日本経済新聞NIKKEI STYLE/2017.6.15)
*「時間栄養学の総決算!寿命のカギを握る『テロメア』を長持ちさせるには?」(日清製粉グループ)