プラスコラム
PLUS COLUMN

あなたは何分までなら、待てますか?

コンビニで、飲食店で、レジャー施設で……日々、街のあちこちで目にする行列。並ぶのは嫌いという人も案外、こっそり並んでいたりして……。 

あなたは何分までならイライラしないで待つことができますか?  

 

レジ待ちの限界は何分か 

「ビジネスパーソンの『待ち時間』意識」というシチズン時計の調査があります(2023年4月7日9日/全国2050代の働く男女400人対象)。 

それによると、例えば「スーパーやコンビニでのレジ待ち」では何分でイライラするか? という質問に対して、スーパーの場合は、「30秒」が4.5%、「1分」が8.5%、「2分」が11.3%、「3分」が25.8%でした。 

一方、コンビニでは「30秒」が6.8%、「1分」は23.0%、「2分」が19.3%、「3分」が27.3%で、4人に3人が待ち時間の限界は3分以内でした。 

スーパーよりもコンビニの方が早めにイライラする傾向があるようです。 

 

ランチタイムの飲食店の待ちは 

では、ランチタイムでの「空席待ち」は何分でイライラするでしょうか? 

同調査では「5分」以下が24.5%、「10分」と答えた人は28.3%でした。なかには「1分」というせっかちな人も4.8%いましたが、半数以上は10分までならなんとか「待てそう」といった感じのようです。 「早さ」が魅力のファストフード店では? 注文から提供まで「30秒」でイライラする人が3.3%、「1分」が5.8%、「2分」が7.8%で、「2分まで」が合計16.9%でした。以下、「3分5分超」が83.4%で、利用者は、それほどファストフードの「早さ」を気にしているふうではなさそうです。 

 

人はなぜ並ぶのでしょうか 

「待つ」「行列」を象徴する場所といえば、テーマパークと人気飲食店。 

同調査によると、テーマパークの人気アトラクションの待ち時間について、「1時間」が33.8%、「1時間30分」が11.3%、「2時間2時間超」が18.8%でした。6割超が1時間以上の「待ち」は覚悟しているようです。 

また、人気飲食店の入店待ちでも、「1時間」38.3%、「1時間30分」8.5%、「2時間2時間超」10.6%で、やはり長時間の待ちはもはや当たり前。 

でも人はなぜ、こんなにも長い時間、行列に並ぶのでしょう? 

 

待ち続けるときの脳の活動は 

群馬大学と慶應義塾大学大学院などの研究グループは、「待つか? あきらめるか?」の判断にかかわる脳の領域の解明に成功したそうです。 

研究によれば「報酬を期待して待ち続けているときには、脳の前頭前野と海馬の領域が活動していることが観察された」といいます。 

前頭前野は「脳の中の脳」とも呼ばれ、記憶や思考、創造性、感情のコントロールなどを担っているといわれます。 

その前頭前野の活動が小さくなると、「人は報酬を期待して待つのをやめた」ということです。 

つまり人が「待つか、待つのをやめるか」を決定するときには、前頭前野と海馬が重要な役割を果たしているというのです。 

 

並ぶのは周りの行動に合わせるから 

また、「同調行動」とか「サンクコスト効果(埋没費用)」という言葉が、「人はなぜ並ぶのか?」を説明するときによく使われています。 

同調行動とは、「意識的、無意識的にかかわらず自分の行動を周りの行動や意見に合わせてしまう」ことを指すそうです 

例えば「並んでいるからおいしいに違いない」「みんな着ているから自分も着てみよう」というように、周りに合わせることで安心を得たい心理が働くそうです。 

さらに「列を途中で抜けたいけど、もったいなくて抜けたくない」「せっかく○分並んだのだから最後まで並ぼう」ということありませんか? 

 

元をとろうとして損をする 

これが経済行動学でいうサンクコスト効果と呼ばれる心理だそうです。 

他にも、例えば序盤で面白くないと感じた本や映画などでも、「せっかく買ったんだから最後まで読んで(観て)みよう」といったこともあります。 

途中でやめて別のことをすれば有意義な時間を過ごせたかもしれないのに、「使ったお金の元をとろうとしたばかりに、逆に損をする」結果になりかねないというわけです。 

同調行動やサンクコストは人間ならではの「思考の癖」だそうです。 

あなたの身の回りにあるサンクコストはなんですか? 

 

<参考> 

*「ビジネスパースンの『待ち時間』意識」(シチズン時計株式会社) 

*「待つか?あきらめるか?未来の報酬を待ち続けるための脳機能を解明」(生理学研究所) 

*「『元をとりたい』が口癖の人は損してる?サンクコストを意識しよう」(三菱UFJ銀行) 

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。