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生活習慣病のリスクを高める飲酒量は?

健康を考えると毎日の飲酒量を減らしたい……そう考えている人も少なくないでしょう。 

このたび示された厚生労働省による「飲酒ガイドライン」では「純アルコール量」の把握が大切だとか。どういうことなのでしょう? 

 

若年層の多量飲酒は脳機能に悪影響 

 酒好きの方には耳が痛い話かもしれませんが、厚生労働省はこのたび飲酒にともなう健康リスクを避けるための「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(案)」をまとめたということです。 

それによると……、 

*脳の発達段階にある10〜20歳代は多量に飲酒すると脳の機能が落ちるほか高血圧等のリスクが高まる。 

*女性は男性に比べて分解できるアルコール量が少なく、女性ホルモン(エストロゲンなど)の働きによりアルコールの影響を受けやすいので、男性に比べて少ない飲酒量かつ短期間でアルコール性肝硬変になりやすい。 

また、飲酒によって顔が赤くなったり動悸や吐き気がみられる(フラッシング反応=日本人の41%程度いるといわれている)など、アルコールの分解酵素の働きが弱い人は、口の中のがんや食道がんのリスクが非常に高くなるなど、年齢や性別、体質の違いによるアルコールの影響が指摘されています。 

 

 

純アルコール量」を把握する 

 健康リスク回避のための飲酒量を考えたときの注目点は、単にお酒の「飲む量」ではなく「純アルコール量(グラム)」を基準にして自分の飲酒量を把握しましょうと厚労省は提言します。 

 

生活習慣病リスクを高める飲酒量は 

ちなみに厚労省の「健康日本21」では、1日当たりの適度な飲酒は、純アルコール量に換算して男性20グラム程度、女性10グラム程度。 

生活習慣病のリスクを高める飲酒量は、1日当たりの純アルコール量が男性は40グラム以上、女性20グラム以上としています。 

アルコール濃度を示す「度数」とは違い、あまり馴染みのない純アルコール量という表現ですが、算出するための簡単な計算式があります。 

 純アルコール量(g)=飲酒量(ml)×アルコール濃度(度数/100%)×0.8(アルコールの比重)……で求めることができます 

例えば500mlの缶ビール(度数5%)を1缶飲んだとして、その純アルコール量は……飲酒量500(ml)×0.05(%)×0.8=20(g)……20グラム。 

 この計算式を覚えておけば、自分の飲んだお酒の純アルコール量を把握することができ、酒量のコントロールが容易になるでしょう。 

 

毎日飲酒しないで休肝日を設ける 

 では気になる飲酒量と病気の関係はどうでしょう。 

厚労省の資料(「疾病別リスクと飲酒量(純アルコール量)」)によると、例えば、 

脳梗塞は男性150g/週、女性75g/週 

大腸がんは男女とも150g/週 

肝がんは男性450g/週、女性150g/週 

乳がんは女性100g/週 

など。 

ちなみに海外はどうでしょうか。 

厚労省の同資料によると……アメリカは男性28g(以下)/日、女性14g(以下)/日、イギリスは男女とも112g(未満)/週、韓国は男性40g(以下)/日、女性20g(以下)/日……などとなっています 

純アルコール量の数字は目安。 

健康に留意して、1週間のうちに飲まない日を設ける、飲酒前や途中で食事を摂る、飲酒の合間に水(または炭酸水)を飲むなどの配慮をすることが大切だと厚労省では提言しています。 

  

<参考> 

*「飲酒ガイドライン作成検討会(資料)」(厚生労働省) 

*「健康日本21(第二次)e-ヘルスネット(飲酒量の単位)」(厚生労働省) 

*「飲酒リスク 国が初指針」(東京新聞/2023.11.24) 

 

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。