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「心と体の健康」に効く葉酸の力

生まれてくる赤ちゃんのために、妊活中の人や妊婦さんにすすめられる葉酸の摂取。葉酸はおなかの赤ちゃんの成長を助けてくれますが、それだけではありません。うつや認知症予防にも葉酸の摂取が必要だといわれています。

 

性別・年齢を超えてとりたい栄養素

 あまりなじみのない栄養素なので、「葉酸」という言葉をはじめて聞く人もいるかもしれません。

「葉酸」とはビタミンB群のひとつ。1941年にホウレンソウの葉から発見されたそうです。緑の野菜に多く含まれることから「葉酸」と名付けられたそうです。

 葉酸はビタミンB12と協力して赤血球をつくったり、たんぱく質や細胞をつくるときに必要なDNAやRNAなどの核酸を合成する重要な役割があります。貧血を予防したりおなかの赤ちゃんの正常な発育に必要な栄養素であることから、妊娠を計画している女性や妊婦さんに十分な量の葉酸を摂取することを呼びかけています。

 そんなことから「葉酸」といえば、妊活中や妊娠した人がとるべき栄養素というイメージがあるようですが、実は葉酸は性別や世代を超えて意識的に摂りたい栄養素だといわれています。

 

脳と体の健康を守る

 葉酸は、不安を鎮めるセロトニンや意欲を高めるドーパミンなど脳の神経伝達の合成に関わる大事な働きがあります。

 また、体内の葉酸が不足してくると、神経細胞にダメージを与えるというアミノ酸の一種「ホモシステイン」という物質が分解されなくなって、ホモシステインの増加につながることが知られています。

こうしたことから、葉酸は脳の健康に欠かせない栄養素であることがわかってきました。

 たとえばうつ病の人は、そうでない人と比べて葉酸が明らかに不足していることが指摘されているそうです。

つまり葉酸不足は、うつ病のリスクを高めるのではないかと考えられているようです。さらに葉酸の摂取がうつ病の予防・改善に有効だったという報告もあるそうです。

 また葉酸が欠乏するとアルツハイマー型認知症の発症が高まるというデータもあるなど、脳の健康を保つためには、葉酸を毎日しっかり摂っておくことが重要なようです。     葉酸は脳の健康を保つだけでなく、心筋梗塞や脳卒中などさまざまな病気のリスクを下げることを示す研究結果も発表されているようですから、食事でしっかり葉酸を摂って脳と体の健康を保ちたいものですね。

 

葉酸不足にならないために

 葉酸を多く含む食品には、ホウレンソウやグリーンアスパラ、ブロッコリー、アボカド、枝豆、芽キャベツ、菜の花などの野菜のほかにも、ノリやワカメなどの海藻類、納豆や卵、豚、鶏、牛などのレバー、飲み物では玉露、せん茶、紅茶などがあります。

 一般的な食生活をしていれば、1日に必要とされる葉酸の量を十分とることができるといわれています。

けれども、偏食の人や欠食が多い人、ダイエット中の人は、葉酸に限らず十分な栄養素をとることができません。

またインスタント食品や加工食品、丼物が好きな人、アルコールを多くとる人も葉酸不足になりやすいといわれているので要注意。

 葉酸不足が気になる人は、サプリメントからとるのもひとつの方法ですが、過剰摂取をした場合は、副作用のリスクがあるといわれていますので、とり過ぎには注意を。

サプリメントを利用するときには飲み過ぎないように、必ず1日の服用量を守ることが大切です。

葉酸に限らずビタミンB群は体がエネルギーをつくりだすために欠かせない大事な栄養素です。できれば食事でしっかりと葉酸をとれるといいですね。

 

<参考>

※『心の病を治す 食事・運動・睡眠の整え方』(翔泳社 功刀浩著)

※「葉酸を摂取して認知症・うつ病を予防」(『栄養と料理』女子栄養大学出版部 2022年3月号 )

※「栄養素カレッジ」(大塚製薬)

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。