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猛暑でリスク増大 若い世代も油断できない「夏血栓」にご注意を!

猛暑が続く今年の夏。「体温並みの暑さ」という言葉がありますが、今夏は39度、40度越えの地域もあり「高熱並みの暑さ」であることも珍しくありません。

猛暑で気をつけたいのが熱中症。

でもそれだけではありません。命を脅かす夏血栓に注意が必要です。

 

30代~50代も夏血栓に注意が必要

 脳梗塞や心筋梗塞といえば寒い冬の日に多く起こるイメージがあるようですが、実は夏は脱水症によって発症リスクが高まるそうです。

しかも、夏は30~50代にも増える傾向があるといいますから、若いから大丈夫と油断はできません。

 そもそも、血栓とは、心臓や血管にできる血のかたまりのこと。

血栓が脳の血管で詰まれば脳梗塞に、心臓の血管で詰まれば心筋梗塞を引き起こします。いわゆるエコノミークラス症候群といわれる肺血栓塞栓症も、血栓が引き起こす病気の一つです

 

脳梗塞は夏場も多発!?

 寒い季節は、体は体温を維持しようと血管を収縮させますが、血管が収縮すると血液の流れが悪くなって、血栓ができやすくなることが知られています。

一方夏場の血栓のリスクとなるのが脱水症です。

体が脱水状態になると、血液中の水分が不足します。その結果血液がいわゆる「ドロドロ」となって血栓ができやすく、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まるそうです。

とくに注意したいのが脳梗塞で、国立循環器病研究センターの調査データでは夏にも多く発症するようです。

また、海外の調査によると、平均気温32度では脳梗塞による死亡率が急に上昇するという報告があるそうです。

最高気温が35度以上の猛暑日が続く今年の夏は、まさに脳梗塞警戒のシーズンになりそうです。

 

水分補給が大事。就寝前・起床時にもコップ1杯の水を

 夏血栓を起こさないためには、何より水分補給が重要だといわれています。

のどが渇いたと思うときには、すでに体内で脱水症が進行するといわれています。のどがかわいていなくても、1時間に1回は水を飲むなど早め早めの水分を心がけましょう。

 また、睡眠中は水分補給ができないために、汗をかく夏は寝ている間に体が脱水状態になったり、起床直後は血圧も上がりがち。就寝前と朝起きたときに、コップ1杯の水を飲むことを習慣にするとよいそうです。

とくに高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病のある人は、血管が詰まりやすいのでご用心。早め早めに、そしてこまめに水分補給を行うことをおすすめします。

 

夏のお酒にご用心

水分補給で気をつけたいのがアルコール類です。

ビールをゴクゴク飲んでいると、水分補給をしたような気持になりますが、ビールには利尿作用があるため、飲んだ分以上尿として水分が排出されてしまうそうです。

ゴルフや野球などスポーツのあとのビールを楽しみにのどの渇きを我慢するという人もいますが、夏血栓のリスクが高まります。

またスポーツに限らず、バーベキューや夏フェスなど屋外で飲むアルコールにも注意が必要です。脱水症予防には、アルコールを飲む前、飲んでいる最中、飲んだあとにも水を飲んで水分補給をするとよいといわれています。

ところで、猛暑日が続くと熱中症も心配になります。

めまい、立ちくらみ、嘔吐など熱中症の症状と脳梗塞の症状は似ているそうですから、気をつけましょう。

 

 

<参考>

※「世代別の血栓症のリスク」(『栄養と料理』女子栄養大学出版部 2021年8月号 )

※「脳梗塞は冬の病気?夏の病気?」(2018年プレスリリース 国立循環器病研究センター)

※「『健康のために水を飲もう』推進運動」(厚生労働省)

※「熱中症だけじゃない! 夏の血栓症にご用心!」(産業保健新聞)

 

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。