プラスコラム
PLUS COLUMN

体内時計を乱して免疫力を下げていない?

新型コロナ対策で、テレワーク生活に入った人も多いのではないでしょうか?

満員の通勤電車から解放されてホッとする一方で、オン・オフの切り替えがつかなくて、生活リズムがつかめないという声も多く聞きます。

不規則な生活が続いて体内時計が乱れると、免疫が老化するという気になる研究報告があります。

 

体のリズムをつくる体内時計

ご存知の方も多いと思いますが、「体内時計って何?」という人のために、ここでちょっとおさらいを。

人は朝日が昇ると目覚め、昼は活動的になり、夜になると自然に眠気が訪れます。こうした体内のリズムをつくっているのが、脳の中にある体内時計。

体内時計は、24時間より少し長めの周期を刻んでいるそうです。

 

体内時計は放っておけば、どんどん後ろにずれていく

朝目覚めて朝日を浴びることで、体内時計のズレが修正されますが、夜強い光を浴びていたり、朝寝坊をして太陽の光を浴びる時間が遅くなると、ズレが修正できずに体内時計が乱れてしまいます。

そうなると、睡眠リズムがどんどん後ろにずれていってしまうのです。

 

体内時計の乱れが病気を招く

それだけではありません。体内時計は、体温の調整やホルモンの分泌、免疫系統など体の大事な機能も調整していますから、体内時計が乱れると、生活習慣病にかかりやすくなったり、免疫力が低下することが知られています。

これまで不規則な生活は病気のリスクを上げることはわかっていても、詳細なメカニズムはわかっていなかったらしいのですが、このたび京都府立医科大学などのグループが、体内時計と生活時間のズレが引き起こす病気を引き起こすメカニズムの一端を解明したそうです。

 

不規則な生活が及ぼす影響

 京都府立医科大学の報告によると研究グループの八木田和宏教授らは、規則正しい明暗環境で生活するマウスと、明暗周期をずらして不規則な生活を送るマウスとに分けて長期間観察し、マウスの肝臓と腎臓で働く遺伝子を解析したところ、不規則な生活を送り続けていたマウスでは免疫系の遺伝子に何らかの異常が見つかったそうです。

さらに肝臓では、慢性的な炎症を起こしており、リンパ球などの解析から免疫の老化が促進していることが判明。

 不規則な生活が免疫に及ぼす影響が、遺伝子レベルで解明できたということです。

 

免疫力と感染症

ウイルスや細菌などの病原体から自分を守ったり、病気を治そうとする力は、この免疫力にかかっているといわれています。

つまり病原体より免疫のほうが強ければ病気は発症しないということになります。

 

「巣ごもり中」も規則正しい生活を

体内時計を正しく動かし、免疫力を下げないために基本となるのが規則正しい生活です。

あたりまえのことながら、なかなか実行しにくいのが、この規則正しい生活というヤツ。

決まった時間に起きて、栄養バランスのとれた食事をして、しっかり睡眠を取って云々……という、あの決まり文句です。

わかっていてもなかなかできない規律正しい生活ですが、感染症から身を守る1つの方法ではないでしょうか。

感染症の怖さをこの度、改めて再認識した人も多いでしょう。

不規則な毎日に心当たりがある人は、明日からといわず、今すぐ始めましょう。

 

<参考>

*プレスリリース「持続する体内時計の乱れは免疫老化を促進する」(京都府立医科大学)

*e-ヘルスネット「体内時計」(厚生労働省)

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。