プラスコラム
PLUS COLUMN

お風呂のお湯は、翌日追い炊きして入っても大丈夫?

日に日に寒い日が増えてきて、熱いお風呂が恋しい季節になりました。

身も心もヌクヌクあったまってストレスも解消……となんとも頼もしい日本式お風呂。

でも入ったあとに浴槽を洗ったり、また新しくお湯を入れたりがなんとなく面倒くさいという人も多いのでは? 

浴槽に張ったお湯は、何日くらい入ってもオーケーなんでしょう?

 

お風呂のお湯のバイ菌は、一晩でン千倍に激増?

「毎日、新しいお風呂をわかすのは経済的でないし、第一、水の無駄遣い」とか

「いや〜多少のバイ菌なら平気ですよ。逆に体も丈夫になるんじゃないの?」などということで、「3〜4日は追い炊きして同じお風呂のお湯に入っています」

……そんな剛の者もいらっしゃるでしょう。

一方で、毎日入れ替え派のなかには「そんな! 不潔です」

「何日も追い炊きし続けるなんてとんでもない!」

「うちは毎日お風呂のお湯を替えています。当然です!」と追い炊き派に激しく憤る人もいるでしょう。

お風呂のお湯についての言い分は人によって、また性格、習慣によってまちまち。あなたはどっち派ですか?

 

衛生微生物研究センターという会社の調べでは、お風呂にお湯を張った直後のバイ菌の数は1㎖当たり数十個ですが、2人入ったあとでは110個、一晩放置すると、それがなんと25万個にもなるということです。

この数字は1㎖当たりの数ですから、浴槽1つ分のお湯(180〜200ℓくらい)に換算すると、もう天文学的な数字というか、電卓の表示部だけでは間に合わないとうか、容易には計算できないほどの数のバイ菌が繁殖していることになってしまいます……考えるだに恐ろしいことです!

少しのバイ菌なら、人間の体からしみ出た菌ですから、すぐさま病気になるようなこともないらしいのですが、さすがに一晩放置したお風呂に入ったあとの健康は保証できない数値かもしれませんね。

 

災害対策的にみれば、お風呂のお湯はすぐには抜かない?

そんなわけでお風呂は入ったらお湯を抜き、毎日、新しくお湯を入れ替え、浴槽もていねいに洗い、きれいな状態にして入るのが望ましい……ということになるのですが、よく地震対策などで、お風呂のお湯は抜かないで、災害時の万一のときのためにとっておいたほうがいい、といったことも聞きますよね。

それを推奨している自治体もあるようです。

これっておそらく災害時のトイレ対策のことなんでしょうが……

つまり、断水して水道が使えなくなったときにお風呂の残り湯でトイレの排泄物を流すという……

だとするとお風呂のお湯はすぐには抜かずに、翌日までとっておくのがよいということになりますが、お風呂に入る直前に前日のお湯を抜いて、浴槽をきれいにして、新しくお湯を張るって、けっこう面倒くさいんですよ。

とくに疲れて、酔って夜遅く帰ってきた日などは……。

それなら「いっそそのまま追い炊きして入ってしまえ!」というような気持ちにもなります。

というようなことを翌日も、そしてその翌日もくり返して、結果的に同じお風呂に3日も4日も入ってしまう……みたいなことになってしまって、しまいには「もうめんどくさいから、このままでいいや」みたいな投げやりな、どうとでもなれみたいな気持ちになって、ドヨンドヨンとよどんだお風呂に入り続けてしまうといったような、どうにも汚穢(おわい)な、困った話になってしまうことも、ないではないですよね。

 

それなら、さら湯の一番風呂」を選びますか?

じゃ、毎日、さら湯に入ればいいかというと、そうでもないらしく、「さら湯は身の毒」ということが昔からいわれていて、これは一番湯はきれい過ぎて、浸透圧の関係から体内のミネラル分がお湯に溶け出るということになって、体を害してしまうらしいです。

いいのは「いの1番に入る」という気持ちよさだけですかね。

「ほら、いわんこっちゃない、やはり古いお湯のほうが体にはいいんじゃないか」という向きもないではないのですが、バイ菌のことを考えるとそうとも断言できません。

なんというか1人か2人くらい入ったあとの2番目か3番目あたりにお風呂に入るのがいいような……ということになりそうです。

今では入浴剤という便利なものがありますから、「さら湯は身の毒」の心配も不要。入浴剤があれば安心して一番風呂に入れますね。これで1人暮らしの人も、めでたしめでたし……。

 

<参考URL>

*「風呂の残り湯は使っても良い?」((株)衛生微生物研究センター)

https://kabi.co.jp/kabi.php?k=k15

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。