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道ならぬ恋は「ロミ&ジュリ効果」で燃えあがる

前回は、生理的なドキドキを脳が「恋愛」と錯覚してしまうお話でした。恋の錯覚続きで今回は「ロミオとジュリエット効果」についてのお話です。

恋は障壁が高いほど熱愛度も高くなる

「ロミオとジュリエット」といえば、シェークスピアによる究極の恋愛戯曲。敵対する家同士に生まれながら、恋に落ちたロミオとジュリエット。周囲が二人の仲を割こうとすればするほど、ますます恋心を燃え上がらせて、悲劇の最期を遂げるというストーリーです。
恋は障壁が高いほど燃え上がり、二人の結びつきが強くなることを「ロミオとジュリエット効果」といいます。
命名したのは、アメリカの心理学者のドリスコールだといわれています。
ドリスコールは、140組のカップルを対象に、それぞれのカップルの「熱愛度」と恋への「障害度」の相関関係を調査しました。その結果、親の反対などの障害度が高ければ高いほど、カップル同士の恋愛感情が強まり、熱愛度が高まることがあきらかになったのです。

自由を奪われるとよけいに自由に固執する

でも、なぜ道ならぬ恋ほど燃え上がるのか――そこには、心理的リアクタンスが働いているといわれています。心理的リアクタンスとは、人は、自分の行 動や意見などを自分で自由に決めたいという心理があり、それを他人から強制されるとより自由に執着するという理論。たとえば、子どものころ親から「勉強し なさい」といわれればいわれるほどやりたくなくなる心理も心理的リアクタンスのひとつ。
あるいは、ちょっとかわったところで、お店の前に「1日 20個限定」という張り紙が張られていると、つい買ってしまうのも心理的リアクタンスが働いているといいます。 この場合「今を逃したら買えなくなる(買 う自由を奪われる)」といった恐怖心が働いて、とくに欲しいわけではないのに買ってしまうというわけです。
「いつでも手に入るものは、価値が低いが、めったに手に入らないものは価値が高い」という思い込みの心理が働いてしまうのです。

説得するほど反発が強くなる

さて、恋にお話をもどしましょう。
「駆け落ち」という言葉が死語になりつつある現代において、典型的な「ロミオとジュリエット効果」が働く のは、なんといっても不倫でしょう。「好きになってはいけない人を好きになってしまった」という状況に、心理的リアクタンスが働いて、ふたりはますます禁 断の恋に酔っていきます。
こんなとき、周囲は「やめたほうがいい」と説得したくなるものですが、説得は思いとどまったほうがよさそうです。
な ぜなら、そこには「ブーメラン効果」というものが働くからです。ブーメラン効果は、人は説得されると自分の自由が無くなると考え、説得とは逆の思いを強め てしまう、という心理作用。相手のためを思って説得するつもりが、かえって強い反発を招き、ますますふたりの恋を燃え上がらせる結果になってしまいます。

恋の錯覚は、燃え上がるのも早いが、沈静化も早い

しかし、ロミオとジュリエット効果は、しょせん恋する脳が錯覚しているだけのこと。 障害がなくなると恋の炎もすみやかに沈静化していきます。
苦労の末、不倫相手を離婚させて、結婚にまでこぎつけたのに、とたん熱が冷めて結婚をやめたくなったというケースはよくあること。周囲は無理にふたりの仲を引き裂こうとしないで、冷静にみていたほうがよさそうです。

 

 

<参考資料>
・『恋愛心理学』(ナツメ社:匠英一)

<参考URL>
・心理学用語集 http://www.1-ski.net/archives/000212.html
・gooヘルスケア http://health.goo.ne.jp/mental/yougo/032.html

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。