
「シンデレラ体重」と女性の健康リスクとは?
おとぎ話の「シンデレラ」がやせていたのか定かではありませんが、多くの若い女性がめざす「やせ」は、栄養不足はもちろん、さまざまな健康リスクをともなうといわれます。
「何が?」「どう?」危ないのでしょうか。
20歳代女性の10人に2人が「やせ」
「やせたら美しくなれる」「やせたら幸せになれる」……いまでも十分やせているのに、さらにやせようとする若い女性の極端な「やせ願望」は、依然として高い関心を示しているようです。
厚生労働省の「国民健康・栄養調査 令和4(2022)年」によると、20~29歳の女性の19.1%が「やせ」ているといいます。
同調査によれば2010年に「やせ」の割合が29.0%を記録して以降、毎年のように20%前後の高い「やせ」率を維持しています。
そんななか、いま「シンデレラ体重」という言葉が広く使われているといいます。別名「モデル体重」つまり「モデルのように美しく見える体重」ともいわれ、若い女性たちにとっては「理想の体重」「やせた体型」を意味しているようです。
「シンデレラ体重」の不健康な理由
肥満度や低体重を表す体格指数のBMI(Body Mass Index)は、<体重(Kg)÷身長(m)÷身長(m)>で求められ、18.5未満は「低体重(やせ)」に分類されます。
さらに標準体重は<身長(m)×身長(m)×22>の計算式で求められます。
例えば身長が158cm、体重が50kgの人のBMIは20.0で普通体重です。標準体重の計算式では54.9kgとなりBMIでも21.9で普通体重です。
一方、「シンデレラ体重」は<身長(m)×身長(m)×18>で体重を算出します。上記の例で計算すると44.9kgです。標準体重より10kgも少ない体重になり、BMIにすると17.9で、やはり「やせ」に該当します。
「シンデレラ体重」を目指して達成したとしても、BMIや標準体重の基準で見ると「やせ過ぎ」で「不健康」な体重ということになります。
「やせ」が招く糖尿病予備軍への道
見た目がたとえ本人的に「美しく」ても、「やせ」は、様々な健康リスクを招くといわれます。
順天堂大学の研究によれば、標準体重(BMI18.5~23.0)の若い女性に比べて、やせ型(BMI16.0~18.49)の女性は食後高血糖になる「耐糖能異常」の割合が約7倍も高いことが明らかになったといいます。
これは糖尿病予備軍ともいえるものだそうで、やせていても糖尿病が起きやすい体質になっているということです。
「やせ」と栄養不足の密接な関係
また、藤田医科大学の研究グループは、病院職員(20~39歳の女性)の調査で、「やせ」(BMI17.5未満)の人(全体の16.8%)の多くでビタミンなどの栄養が不足していることが分かったといいます。
たとえば骨や歯の発育促進に関係するビタミンDの欠乏が「やせ」全体の98%、造血作用があるビタミンB12の欠乏が20%、「疲労回復ビタミン」とも呼ばれるビタミンB1の欠乏が4.6%、胎児の健康のために妊娠の前から摂取が必要な葉酸の欠乏が14%の割合で確認されたといいます。
食事内容でも9割の人が鉄分やカルシウムの摂取が不足だったそうです。
さらに3割の人が朝食を抜いたり、昼食はおにぎりやパスタだけ、夕食を食べないという人もいたといいます。
「いま」のやせは、将来の健康リスクに?
こうした研究によって示されたのは、若い女性の「いま」のやせは、「これから」の彼女たちの健康リスクにつながる可能性があるということ。「やせ」が「幸せ」をもたらすかどうかは、かなり怪しい気配が漂います。
例えば骨量の減少による「骨粗しょう症」、さらには「月経異常」「無月経」、そして「不妊」などのリスクです。
また、筋肉の減少から身体能力が低下する「サルコペニア」も低栄養が原因といわれます。
「やせ」の弊害が様々取りざたされる中、「先進国で一番、女性がやせている国」という、あまりありがたくない話題を一刻も早く過去のエピソードにしたいものですね。
<参考>
*「若い女性の『やせ』や無理なダイエットが引き起こす栄養問題」(厚生労働省 e-ヘルスネット)
*「食後高血糖となる耐糖能異常が痩せた若年女性に多いことが明らかに」(順天堂大学News &Information/2021.2.16)
*「シンデレラ体重がもたらす健康リスク」(藤田医科大学/2021.5.15)
*「痩せすぎ女性は栄養不足」(東京新聞/2024.7.17)