睡眠休養感の低い人の健康リスクとは?
仕事に育児に忙しくて、思うように睡眠時間が取れない……そんな人もいることでしょう。
でも、たかが睡眠不足とすまされません。命にかかわる健康面でのリスクもあるようです。されど睡眠!
●睡眠への不満を感じる人が5割以上
相変わらず睡眠が十分に取れていない人が多くいらっしゃるようです。
「令和元年 国民健康・栄養調査」(厚生労働省)によると「睡眠時間が足りない」「睡眠全体の質に満足できない」と感じているのは20~40代に多く、2つの項目の合計が、20代の男性で60.9%、女性で65.3%。30代の男性で52.0%、女性で60.8%。40代の男性で52.2%、女性53.4%で、どの世代も2つの項目を合わせて50%を超えています。
睡眠に対する不満は、「時間」「質」ともにかなり高いようです。
●睡眠6時間未満の人が約4割も?
というわけで睡眠時間は世界でも最低ランクの日本。OECD(経済協力開発機構)の調査(2021年版)によると、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で加盟国平均の8時間28分より1時間以上短いことが分かりました。
「国民健康・栄養調査」でも睡眠時間の短さが示されています。
1日の平均睡眠時間が6時間未満の人の割合は男性で37.5%、女性が40.6%もいて、年齢的には30~50歳代の男性、40~50歳代の女性では4割以上が6時間未満の睡眠時間だということです。
また、5時間未満に限定すると20~50歳代の約5~12%もいるようです。
●成人の睡眠時間は6~8時間が目安
極端な睡眠不足は、肥満や高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管疾患、認知症、うつ病などの発症リスクが高まるといわれています。
そんな国民の寝不足による健康リスクへの危機感からか、厚労省はこのたび『健康づくりのための睡眠ガイド2023』を作成しました。
それによると、成人に推奨する睡眠時間は6~8時間を目安とし、「少なくても6時間以上は確保すること」としています。
一方、高齢者は長時間の睡眠や昼寝は死亡リスクを高めるので、寝床にいる時間が8時間以上にならないことが目安だそうです。
●睡眠休養感が低い人の健康リスク
また成人と高齢者は「睡眠休養感」が重要だといいます。
「睡眠休養感」とは、目覚めたときに体が休まったと感じることで、この睡眠休養感が低下すると、例えば肥満や糖尿病、脂質異常症など、健康への悪影響が指摘されています。
さらにアメリカの40歳から64歳の働く世代で行なった調査によると、睡眠時間が5時間半未満の睡眠休養感が低い人ほど、死亡するリスクが高まったという結果が報告されているようです。
●休日の「寝だめ」は健康を損なう?
平日の睡眠不足(睡眠負債)を取り戻そうとして休日に長時間寝る、いわゆる「寝だめ」をする人も多いようです。
でも「寝だめ」で眠りの貯金はできないといわれています。むしろ「寝だめ」によって休日の起床時間が大きく遅れると体内時計が混乱し、時差ボケが生じて健康を損なう危険性があるということです。
社会的時差ボケと呼んでいるようですが、これは慢性的な睡眠不足による健康への影響と、体内時計のズレによる健康への悪影響の二重の健康被害の可能性を秘めていて、生活習慣病や脳血管障害、心疾患などのリスクが報告されているともいいます。
●よりよい睡眠をとるためには?
良質な睡眠をとるためにはどうしたらいいでしょう?
環境面では、体内時計を整えるために日中に日光を浴び、寝室にはスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして寝る。入浴は就寝の1時間から2時間前にすませるなどが推奨されています。
運動と食事面では、適度な運動の習慣を身に付けること。朝食をしっかり摂り、就寝前の夜食は控える。無理に寝ようとしないことが有効など。
他にもカフェインの摂取量は1日400ミリグラム(コーヒーカップ4杯程度)を限度とし、夕方以降は控える。寝酒や喫煙は睡眠の質を低下させるのでやめるなどが『睡眠ガイド』の提言に盛り込まれています。
眠れば心身がリフレッシュ、そしてリセット。睡眠、大切にしたいね。
<参考>
*「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(厚生労働省)
*「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」(厚生労働省)