病気・トラブル辞典
SICKNESS & TROUBLE DICTIONARY

貧血
[ひんけつ] 体の病気 循環器(心臓)・呼吸器(肺)

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婦人科、女性外来

血液中のヘモグロビンが標準よりも少ない状態をいいます。
ヘモグロビンは赤血球の中に含まれ、全身に酸素を運ぶ役割を持つ血色素。貧血になると体が酸素不足に陥り、頭痛、めまい、息切れなどの症状があらわれます。
貧血といえば鉄欠乏性貧血がもっとも一般的です。ほかに巨赤芽球貧血、溶血性貧血、再生不良性貧血などがあります。脳貧血と混同することがありますが、脳貧血は脳を流れる血液が一時的に減ることによって、顔が青白くなったり、冷や汗がでたり、意識が薄れたりする状態です。

鉄欠乏性貧血

ヘモグロビンの主要成分である鉄が不足した状態です。鉄分が不足するとヘモグロビンがつくれなくなり、赤血球の中のヘモグロビンの量も減ってきます。体の組織や臓器が酸素不足になり、正常な働きができなくなります。貧血のなかでももっとも多く、とくに女性に多くみられます。
症状
顔色が悪くなり、立ちくらみや動悸、息切れ、めまい、頭痛などが起こりますが、症状が徐々に進行するので、なかなか貧血だと気がつかないこともあります。ほかに、爪が弱くなり割れやすくなったり、指の爪が中央がくぼんでスプーンのように反り返って変形することもあります。ひどくなると、起き上がれなくなることもあります。
原因
女性に多いいちばんの理由は、月経で血液を失うことですが、栄養を無視したダイエットや偏食などの食生活の乱れから鉄分が不足するケースも増えています。また、妊娠や授乳中は、通常より鉄分が多く必要なことも原因となっています。ほかに、子宮筋腫や胃潰瘍、痔、がんなどの病気によって出血が長期にわたって続くことにより鉄分が不足することもあります。
治療
鉄剤を服用します。胃潰瘍や痔、がん、子宮筋腫などの病気があれば、その治療が必要です。鉄剤は長期間の服用が必要なので、途中で勝手にやめないことが大切です。
注意したいこと
女性は貧血になりやすいので、日ごろから栄養のバランスに気を配った食事を心がけましょう。鉄分の多く含まれる食品には、赤身の肉や魚、レバー、貝類、ほうれん草や高野豆腐などがあります。とくに肉や魚に含まれる鉄は、ヘム鉄といって、野菜などに含まれる非ヘム鉄の数倍も吸収率が高いのが特徴です。また、ビタミンCやタンパク質は鉄の吸収を高めるので、偏食せずバランスよく食べるのが大切です。鉄の鍋を調理に使うとわずかですが鉄の吸収に役立ちます。サプリメントだけに頼るのは避けましょう。

巨赤芽球性貧血

体内でビタミンが不足すると、正常な赤血球がつくられず、通常の赤血球よりも大きい巨赤芽球があらわれます。この異常な赤血球は成熟しないで死んでしまうために赤血球が不足して貧血が起こります。日本では少ない貧血で、高齢者や胃を切除した人に見られます。
症状
だるさ、息切れ、動悸などの一般的な貧血の症状のほか、舌が赤くなってぴりぴりする、舌の表面がツルツルするといった症状がみられます。また、ビタミンB12の欠乏状態が続くと、手足がしびれたり、知覚が鈍くなったりします。
原因
ビタミン12や葉酸が欠乏して起こります。ビタミン12が不足するのは、ほとんどの場合、萎縮性胃炎や胃の切除などによってビタミンが十分に吸収されないためです。
治療
貧血の原因となっているビタミン12や葉酸を投与します。

溶血性貧血

赤血球の寿命が通常より縮まり、赤血球が次々にこわれて、溶けてしまうために貧血を起こします。先天性のものと後天性のものがあります。それほど多くみられる貧血ではありません。
症状
だるさ、息切れ、動悸など、一般的な貧血の症状ほか、黄疸がでるのが特徴です。ひどくなると溶血のために尿の色が茶褐色になります。
原因
先天性の場合は、生まれつき赤血球に異常があって起こります。後天性の場合は、自己免疫性溶血性貧血が代表的。これは自分の赤血球を抗原(異物)とみなして抗体をつくってしまう自己免疫疾患によるものです。
治療
先天性の場合は手術で脾臓を摘出して、赤血球がこわされるのを抑えます。後天性の場合で、自己免疫疾患が原因のときは、副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤を投与します。

再生不良性貧血

血液は骨髄でつくられますが、骨髄の働きが衰えて造血機能が低下して起こる貧血です。白血球や血小板なども減少するので、感染しやすくなったり出血しやすくなります。厚生労働省による特定疾患(難病)の対象になっています。
症状
だるさ、息切れ、動悸など一般的な貧血の症状のほか、皮膚を打撲すると内出血による紫斑がでたり、皮膚、歯ぐき、鼻から出血するなど、さまざまな出血傾向がみられます。発熱、のどの痛みなど抵抗力の低下などもみられます。
原因
骨髄の造血機能が先天的に悪かったり、自己免疫疾患が原因の場合もありますが、ほとんどは原因が不明です。薬剤、化学物質、放射線、肝炎ウイルスなどが原因になることもあります。
治療
原因によって治療法は異なりますが、輸血による対症療法が行われます。重症の場合は、骨髄移植を考慮します。