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「糖質」イコール「炭水化物」ではない?

「糖質制限」とか「糖質カット」といった言葉をよく耳にしますが、そもそも「糖質」ってなんでしょう? 

言葉のイメージから単に「甘いもの」と思ってしまいがちですが、そう単純ではなさそうです。

 

糖質は体に悪いもの?

「糖質」という言葉から真っ先に思い浮かべるイメージは?

おそらくほとんどの人は「甘いもの」「健康によくない」「肥満」、さらに「ダイエット」といったことではないでしょうか。

 糖質に対してあまり好ましい印象はないようです。

「糖質制限」とか「糖質カット」といった言葉が、いまでは一般に広く使われるようになったことと無縁ではないかもしれません。

そういう世相背景もあってのことでしょうか、「糖質低減」をうたう炊飯器が注目されているらしいです。

さらに最近、そんな「糖質カット機能」の炊飯器と、通常の炊飯器で炊いたご飯の「糖質の総量に差はなかった」として、国民生活センターが「注意を呼びかけた」という報道もありました(東京新聞/2023.3.16)。

「糖質」は多くの人の関心事であることは間違いないようです。

 

炭水化物に含まれるのは「糖質」だけ?

「炭水化物」と「糖質」はイコールと考える人は少なくないようです。

しかし「糖質」は「炭水化物」の一種で一部ではあるけれども、その全部ではないようです。

厚生労働省e-ヘルスネットによると、炭水化物は「炭素と水素からできた化合物」で、エネルギーのもととなる「糖質」と、人の消化酵素では分解できずエネルギーにはならない「食物繊維」に分けられます。

じつは炭水化物には糖質だけでなく食物繊維も含まれていたのです。

炭水化物は、タンパク質や脂質とともに「エネルギー産生物質」の1つといわれていますが、なかでも糖質は必要不可欠な栄養素で、体の機能を維持するためのエネルギー源として重要な役割を担っています。

 

ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源

 糖質にはいくつか種類があります。

糖が1つの単糖類(ブドウ糖、果糖など)、糖が2つ以上結合した少糖類(ショ糖、乳糖、麦芽糖)、糖がたくさん結合している多糖類(でんぷん、グリコーゲン)に分類されます。

 消化吸収された糖質は、最終的にブドウ糖として全身に供給されエネルギー源になります。

なかでも脳や神経はブドウ糖以外はエネルギーにできないといわれます。

例えば脳だけで基礎代謝量の約2割ものブドウ糖を消費するとか、1日に120グラムのブドウ糖を消費するなどともいわれます。

そのため脳へのブドウ糖の供給が不足すると意識障害を起こすこともあるようです。

 

糖が1つより多糖類の吸収はゆっくり

たしかに糖質は過剰に摂取すると肥満や高血圧などを招くおそれもありますが、だからといって摂取を制限したり、まったく摂らないのは、疲労感や集中力の低下など、様々な体のトラブルにつながるともいわれます。

 糖質には、単糖類ほど速く吸収され、多糖類のように糖がたくさん結合している方がゆっくり吸収されるという特徴があるようです。

「糖質は太りやすい」といわれるのは、糖質が吸収されやすい単糖類を摂り過ぎることで血糖値が急激に上昇するからと考えられます。

 菓子パンや果物、ジュースなど甘いもので食事をすますよりは、ごはんやめん類などを選んだ方が糖質の吸収をゆっくりに抑えることができます。

「太る」とか「血糖値を上げる」など、何かと話題の尽きない炭水化物ですが、そこに含まれる糖質も食物繊維も健康維持には欠かせないものです。

厚労省は炭水化物から摂取するカロリーの目標値を1日の総摂取カロリーの50〜65%としています。

食事の約半分は炭水化物でということです。

もちろん、スイーツだけで半分といった食事の選択は論外ですよ、ね。

 

<参考>

*「炭水化物/糖質」(e-ヘルスネット厚生労働省)

*「糖質と炭水化物の関係は?両者の違いやはたらきを解説」(株式会社ロッテ)

*「炭水化物と糖質の違いとは?それぞれの役割について解説」(サントリーウエルネスOnline)

 

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。