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血液一般検査血液を調べる検査

検査名称

白血球数、血小板数、白血球分画(血液像)、出血時間、プロトビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、赤沈(血沈)

基準値

白血球数(WBC) 3500~9700/μℓ(マイクロリットル)
血小板数(PLT、PL) 好中球桿状核球0~6%、好中球分葉核球32~73%、好酸球0~6%、好塩基単球0~8%、リンパ球 18~59%
白血球分画(血液像) 34.3~45.2%)
出血時間 1~3分(デューク法)
プロトロンビン時間(PT) 凝固時間10~13秒、プロトビン活性80~120%
活性化部分トロンボプラスチン時間(APPT) 25秒~40秒
赤沈(血沈・ESR) 男性2~10mm 女性3~15mm

どんな検査?

血液はわたしたちの体をくまなく循環しています。その量は、体重65kg人では、約5ℓにもなります。血液の約50%は、赤血球、白血球、血小板などの細胞成分(血球)で、残りの液体成分(血漿)は、水が主成分でタンパク質、脂質、糖、電解質などが溶け込んでいます。血液を調べることで得られる体内の情報は膨大なものです。そのうち血液細胞の形や量、止血のはたらきを調べるのが血液一般検査です。

検査で何がわかる?

白血球数(WBC)

白血球は、体外から侵入してきた細菌やウイルス、異物を排除するはたらきがあります。傷や炎症などがあると、白血球は骨髄(こつずい)で盛んにつくられるようになり、血液中の数が増えてきます。
白血球数が基準値より高い場合は、けがのほか、扁桃腺(へんとうせん)、気管支炎、肺炎、腎盂腎炎(じんうじんえん)、膀胱炎などの炎症性疾患が疑われます。また、白血病、がんなどがあるときも高くなります。
一方低い場合は、再生不良性貧血、肝硬変(かんこうへん)、急性白血病、膠原病(こうげんびょう)、一部の白血病、ウイルス感染などが疑われます。
なお、白血球数は運動やストレスなどが原因で一時的に増えることがあります。そのほか、ヘビースモーカーも白血球数が増えます。多少の低値、高値であっても、ほかの検査で異常がなく自覚症状がなければ心配はいりません。

血小板(PLT、PL)

血小板は血液を凝固(ぎょうこ)させる作用があり、止血に重要なはたらきをしています。血小板の数が少なくなったり、その機能が低下すると出血しやすくなったり出血が止まりにくくなります。また多すぎると、血栓(けっせん)が生じやすくなります。
血小板数が低値の場合は、特発性(とくはつせい)血小板(けっしょうばん)減少性紫斑病(げんしょうせいしはんびょう)や再生不良性貧血、白血病、悪性貧血、肝硬変などが疑われます。
反対に値が高い場合では、慢性白血病、多血症(たけつしょう)などが疑われます。

白血球分画(血液像)

白血球は、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球の5種類に分類されています(好中球はさらに、桿状核球(かんじょうかくきゅう)と分葉核球(ぶんようかくきゅう)に分かれる)。この5種類が、どんな割合で含まれているかを調べるのが、白血球分画(血液像)検査です。各球は種類によってはたらきが異なるため、そのうちのどれが増減しているかを調べることによって、病気診断の1つの手がかりになります。
それぞれの種類が基準値をはずれた場合に疑われる病気は、以下のとおりです。

[好中球増加]扁桃炎(へんとうえん)、肺炎、骨髄炎(こつずいえん)、脳炎、慢性骨髄性白血病、心筋梗塞、外傷など
[好中球減少]再生不良性貧血、急性白血病、結核、敗血症など
[好酸球増加]アレルギー性疾患、寄生虫症、クラミジアなど
[好塩基球増加]甲状腺機能低下症(粘液水腫)、慢性骨髄性白血病、潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)など
[好塩基球減少]甲状腺機能亢進症、アレルギー反応の急性期など。
[単球増加]水痘(すいとう)、麻疹(ましん)、しょう紅熱、結核など
[単球減少]悪性貧血
[リンパ球増加]流行性耳下腺炎、百日ぜき、バセドウ病、梅毒など
[リンパ球減少]悪性リンパ腫、がん、白血病など

出血時間

わたしたちの体には、精緻な止血システムが備わっています。そのため、よほどひどい出血でないかぎり、しぜんに血が止まります。止血システムには、血小板が血管の傷ついた部位に粘着・凝集する一次止血、血液凝固因子による二次止血に分かれます。
出血時間の検査は、血小板のはたらきによる一次止血を調べます。皮膚(耳たぶの場合が多い=デューク法)に針でごく小さな傷をつけて、30秒おきに出血の状態を確認します。 血小板の数の減少や機能に異常があると、出血時間が長くなります。
血小板の減少で疑われる病気は、特発性血小板減少性紫斑病(とくはつせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう)、白血病、全身性エリトマトーデス、抗がん剤などの薬物の影響、放射線による影響などがあります。
血小板機能の異常からは、先天性血小板機能低下症、骨髄腫、尿毒症などが疑われます。 なお、出血時間が基準値より短い場合には、問題はありません。

プロトロンビン時間(PT)

体内の止血システムのうち、血液凝固因子(ぎょうこいんし)のはたらきによるものを二次止血といいます。プロトロンビンは血液凝固因子の1つで、複数ある因子のうちでいちばん数が多く、止血の中心的な役割を果たしています。わたしたちの体のどこかで出血すると、肝臓でつくられるプロトロンビンがトロンビンに変化します。このトロンビンが、血液中のフィブリノーゲンという繊維素を水に溶けにくいフィブリンに変えて血液を凝固させるのです。
プロトロンビン時間検査の結果は、2通りに表されます。1つは、出血してから肝臓でプロトロンビンがつくられるまでの時間を秒で表すもの。もう1つは、健康な人とくらべて、プロトロンビンがどのくらいの割合ではたらくかをパーセンテージ(%)で表すものです。 プロトビン時間が13秒以上の場合は、次のような病気が疑われます。
重症の肝疾患(劇症肝炎、肝硬変など)、急性肝炎、ビタミンK欠乏症、播種性血管内凝固症候群(はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)など。

活性化部分トロンボプラスチン時間(APPT)

健康な人の血小板や白血球には、血液を凝固させるはたらきのあるトロンボプラスチンという物質が含まれています。プロトロンビン時間が外因系の凝固機能を反映するのに対し、活性化部分トロンボプラスチン時間は内因系の凝固機能を反映します。プロトロンビン時間とあわせて、血液凝固能力のスクリーニング検査(病気のふるい分け)として広く行なわれています。
たとえば、先天性の血液凝固因子欠乏症の代表的な病気である血友病は、この活性化部分トロンボプラスチン時間ではきわめて延長しますが、プロトロンビン時間では正常です。このように、活性化部分トロンボプラスチン時間はプロトロンビン時間の結果と組み合わせて評価する必要があります。
活性化部分トロンボプラスチン時間が40秒以上の場合は、血友病を疑いますが、播種性血管内凝固症候群、重症の肝疾患、腎不全で血液透析を行っている場合にも基準値をはずれる場合がみられます。

赤沈(血沈・ESR)

赤沈(せきちん)は、赤血球沈降速度の略で、一般に血沈(けっちん)と呼ばれているものです。赤血球が1時間にどれくらい沈んだかを測定します。以前は細いガラス棒に抗凝固剤を入れた血液を入れて測定していましたが、最近では簡便かつ迅速に測定できる装置が開発されています。炎症をともなう多くの疾患で異常値を示すので、この赤沈検査単独で病気を特定することはできませんが、スクリーニング検査(病気のふるい分け)に広く利用されています。
注意したいのは、貧血があるときには赤沈速度が速くなり、炎症とは無関係に結果が高値になります。ヘモグロビンヘマトクリットなどの検査をあわせて行う必要があります。 赤沈検査が高値の場合に疑われる病気には、骨髄腫(こつずいしゅ)、感染症、炎症性疾患、貧血、がんなどがあります。
低値の場合は、播種性血管内凝固症候群(はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)、赤血球増多症などが疑われます。

検査結果の見方

下記の数値の場合、再検査及び、精密検査や治療が必要です。

[経過をみて再検査を行う]
・白血球数(WBC) 2600~3299/μℓ
・血小板数(PLT、PL) 11~13.9万個/μℓ

[精密検査や治療が必要]
・白血球数(WBC) 2599/μℓ以下、11000/μℓ以上
・血小板数(PLT、PL) 10.9万個/μℓ以下、45万個/μℓ以上