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炭水化物抜きダイエットのデメリットとは?

炭水化物抜きダイエットで体重が減るのはなぜ? その仕組みを知らずにトライしてしまうのは危険です。炭水化物を減らすと身体にどんな影響があるのか、メリットもデメリットも理解してから取り組む必要があるのです。

 

【基礎知識】なぜ、炭水化物抜きダイエットで体重が減るのか

炭水化物を抜くと、確かに体重は減ります。つい食べすぎてしまいがちなご飯やパン、麺類などを避けることになるからです。一般的な食生活では、大雑把な目安ですが、カロリーの約55〜60%は炭水化物から摂取していると言われています。そのため、炭水化物を除くことで必然的に摂取カロリーが下がり、体重が減りやすくなるのです。

炭水化物を抜くことで、ダイエット開始後の体内の水分量も変化します。通常、私たちの体は、炭水化物が分解されてできるブドウ糖をガソリンのようにエネルギー源として使います。そして、余ったブドウ糖はグリコーゲンとして体内に貯蔵されます。食事の間隔が長く空いた場合、運動した場合、炭水化物の摂取が減った場合、ブドウ糖が不足してきます。すると、グリコーゲンが分解されてブドウ糖を放出しますが、このとき同時に水分も失われます。すぐにダイエットが成功したように感じるのはこのためです。

 

しかし、人の体の約6割は水分であり、残りは筋肉と脂肪です。数値的に体重が減っても、水分が減ったのでは意味がありません。ダイエットの目的はあくまでも“脂肪を減らすことである”と覚えておきましょう。

 

【デメリットその1】筋肉量が減る&リバウンドしやすい

 

上述の通り、私たちの身体は通常、炭水化物からつくられたブドウ糖や、貯蔵されているグリコーゲンから放たれたブドウ糖をエネルギーとして使います。炭水化物が不足し使えるブドウ糖がなくなってくると、身体はひとつの「非常事態宣言」を出します。これは「糖新生(とうしんせい)」と呼ばれる現象で、筋肉と脂肪からブドウ糖を生成しようとするのですが、このとき、残念ながら脂肪だけを分解してブドウ糖をつくることはできません。複雑なメカニズムですが、脂肪とセットになって筋肉もエネルギー源として使われ、減ってしまいます。筋肉量が減ると、キレイになるためのダイエットは難しくなってしまうのです。

 

また、極端なダイエットはリバウンドを招きます。これは、ダイエット後に炭水化物を十分に摂取した途端にグリコーゲンが再充填され、体内の水分が戻るのも理由のひとつです。このとき、今まで「飢餓状態」だと認識していた身体は省エネモードに入っています。そのため「飢餓に強い身体=痩せにくい身体環境」になることは否めません。さらに、ダイエットのストレスで以前より食べてしまう……ということもあります。

ダイエットは、長期的に続けられる、無理のない食事やエクササイズが必要です。そうでないと、ダイエットをいつまでも繰り返す万年ダイエッターになってしまいかねません。

 

【デメリットその2】体調が悪化する

炭水化物抜きダイエットは穀物・芋類などの摂取を控えることになり、その結果、食物繊維・ビタミン・ミネラルなどが不足しやすくなります。食物繊維は腸内細菌などの環境を整え便秘を予防しますが、第2の脳とも言われる腸が不健康になると、他の臓器にも悪い影響を及ぼしかねません。

また食物繊維は、血中コレステロールなどを改善する役割があると言われており、不足すると心筋梗塞などの生活習慣病を引き起こす可能性があります。同じように、ビタミンやミネラル不足も、さまざまな体の不調を引き起こしかねないのです。

 

通常のエネルギー源であるブドウ糖が枯渇すると、身体が緊急事態とみなし筋肉と脂肪からブドウ糖をつくり出すことになりますが、それでもブドウ糖が不十分な場合には、脂肪酸からつくられるケトン体をエネルギー源として使うことになります。脳や心臓は、ガソリンが欠乏すると生命を維持できないために、このような代替バックアップ体制があるのです。

しかし、炭水化物抜きダイエットは身体の代謝を大きく変えてしまいます。まだ明らかにされていないことも多く、特に血糖値などの代謝に問題がある人・服薬している人・妊娠している可能性がある人などには、安全を保障できるダイエットだとは決して言えないでしょう。

 

【デメリットその3】日常生活に支障が出る

 

日常生活ではまず、家族や友人などとの食事が合わなくなることが挙げられます。炭水化物抜きダイエットでは、脂肪とタンパク質の量を増やす必要があるので、自分だけ別のメニューを食べたり、他の人と一緒に外食することが難しくなったりします。 また、筋肉量の減少、カロリー不足などにより倦怠感が出たり、運動に対して無気力になったりすることが予想されます。さらに、食事を制限することでより炭水化物を摂りたくなってしまったり、我慢することでストレスが溜まりイライラするなど、健全な生活に悪影響を及ぼす可能性が高まってしまいます。

 

【結論】炭水化物抜きダイエットはほどほどに

このように、炭水化物抜きダイエットには、デメリットも少なくありません。一度は体重が減っても、代謝経路が通常に戻るとリバウンドしますし、一度飢餓状態だと認識した身体が“痩せにくい省エネモード”をつくり出す可能性があります。特にダイエットを何度も繰り返している人は要注意です。筋肉が落ち、腸内環境も乱れてくると、健康に良くないだけではなく、見た目のキレイ度も落ちてしまうかもしれません。

 

それでもダイエットしたいというときには、炭水化物を100%抜くのではなく、良質のものを選びつつ約3割減らし、その分、野菜などを増やしてタンパク質が不足しないよう注意することをおすすめします。これでカロリーを約2割弱カットすることが可能です。また、ご飯を雑穀入りのものにすると、食べる量を減らしても、食物繊維も取れるうえにヘルシーな食事をしているという充実感も得られます。パンや麺類の量を減らす代わりに果物や野菜などを増やせば、カロリーや栄養素の面でプラスになるだけでなく、精神的な満足感も得られるはずです。

 

もちろん、適度な運動も必要です。ダイエットを長続きさせるコツは、食生活やライフスタイルに満足感や充実感を感じること。不満とストレスが溜まるダイエットは、長続きしません。メニューやレシピをちょっと工夫する、料理の写真などを撮って食生活を振り返る、といった方法も、続けていくための良いモチベーションになるかもしれません。

 

 

【プロフィール】

一政 晶子(いちまさ あきこ)

管理栄養士、米国登録栄養士(RD)、米国栄養サポート臨床師(CNSC)、臨床栄養学修士。

急性期病院の現場で働く栄養士の経験を活かしながら、実用的な栄養管理のコツと、病気ごとの療養食・食事療法の基礎知識を伝えている。

著書:『60歳からの健康レシピ』(秀和システム)