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女性を悩ませる「外反母趾」

変形がひどくなると、歩くことも不自由に・・・


女性を悩ます足のトラブルに外反母趾があります。外反母趾というのは、足の親指が変形して小指側に曲がってくる状態で、親指の付け根が「く」の字のようになります。

足の親指の付け根の出っ張った関節部分が赤く腫れたり痛んだりするのは、この部分にある滑(かつ)液(えき)包(ほう)(関節の動きをなめらかに動かす潤滑液が入った部分)が靴が圧迫されて炎症を起こすため。炎症がひどくなると、靴を履いていないときも痛むようになります。


また、足の裏にタコができて歩くたびに痛んだり、変形の程度がすすむと、親指がとなりの指(第二趾)の下にもぐりこむようになる人もいます。こうなると、お気に入りの靴が履けなくなるばかりか、足に合う靴を探すことさえむずかしくなります。

外反母趾を引き起こす犯人は、ハイヒール以外にも…

外反母趾は、発症率が男性1に対して女性は9と、圧倒的に女性に多くみられるトラブルです。女性に多いのは、女性は男性に比べて関節がやわらかいため、また足の靭帯や筋肉が弱いためといわれています。
また、よく「外反母趾を起こす犯人は、ハイヒールだ」といわれますが、実はこれは正しい答えではありません。ハイヒールとは無縁の男の子が外反母趾になることがあるなど、生まれつき外反母趾になりやすい体質や足の骨格などを親から受け継いでいることもあります。


後天的な理由としては、(1)足にあわない靴を履く、(2)足の筋肉の低下、歩き方が悪いといったことなどがあげられます。
ちょっとむずかしい話になりますが、外反母趾と切ってもきれない関係にあるのが「開張足(かいちょうそく)」です。聞きなれない言葉だと思いますが、開張足というのは、足の親指付け根と小指の付け根にかけての横のアーチが崩れて平らになっている状態のこと。足に合わない靴を履いていたり、歩き方が悪かったり、足裏の筋肉が低下しているとこの開張足を引き起こし、外反母趾の原因になります。


また外反母趾が開張足を引き起こすという側面があります。そしてそれがますます外反母趾を悪化させることにつながります。
今は外反母趾になっていなくても、足の裏(親指の付け根と小指の付け根の真ん中あたり)にタコがある人は要注意。足の横のアーチが崩れた開張足になっている証拠。外反母趾になる可能性が高いのです。

予防と対策――ここがポイント

外反母趾の治療では、矯正具や足底板を使ったり、足の運動などを行って、変形の進行をくいとめます。足指の変形がひどいと手術をすることがありますが、手術後従来の靴が履けるようになるには3か月ほどかかります。外反母趾をひどくする前に、早めに整形外科に相談することをおすすめします。
日常生活の中では、次の点に気をつけることで外反母趾の進行を防ぐことができます。また、対策はそのまま予防にもつながりますので、外反母趾になっていない人もぜひ実践してくださいね。

足に合った靴を履く

何といっても、足に合った靴を履くことがとても大事。ヒールのある靴は、
(1)足先にゆとりがあって足指が自由に動かせるか、
(2)歩いたときに足が前にすべらないか、
(3)横幅が広すぎないか、
(4)かかとから土踏まずまでをぴったり覆って足にフィットしているか
などを要チェック。ヒールの高さは、5cm以下のものにしましょう。
シューフィッターのいるお店で自分に合った靴を選ぶと安心です。

靴はTPOに合わせて履き替える

ハイヒールは、長時間履き続けないようにしましょう。たとえば、通勤にはスニーカーを、会社ではパンプスを、アフターファイブのデートはハイヒールを、といったように場所や目的に応じて履き替えましょう。

歩き方を変える

靴のかかとが、外側に減っていたり内側に減っていたりしていませんか? 靴のかかとの減りが偏っている人は、歩き方が悪い証拠。
かかとからしっかり着地して、足の外側→足指の根元中央部へと体重を移して、最後に親指を中心にして地面を蹴るのが正しい歩き方。意識しながら、歩いてみましょう。

家ではなるべく裸足で過ごす

家の中ではできるだけ裸足で過ごしましょう。裸足で歩くだけでも、足裏のトレーニングにもなります。

足の筋トレをしよう

足のアーチを守るためには、足の筋肉を鍛えることがとても大事。手軽に簡単にできるトレーニングをご紹介します。毎日行ってください。

足指じゃんけん

グーチョキパーと足を動かすことで外反母趾の防止になります

足の指で、グー、チョキ、パーを出します。はじめは、パーやチョキを出すのがむずかしいかもしれませんが、繰り返すうちにできるようになります。

輪ゴムを使ったトレーニング

幅の広い輪ゴムを、両足の親指のあいだにかけて、足先を開いたり、閉じたりを繰り返します。

プロフィール

大井 律子 先生
整形外科医
大井 律子 先生

医学博士 山口大学女性外来担当医

熊本県生まれ。 1997年、高知医科大学卒業。 同年、山口大学医学部整形外科教室へ入局し、医局関連病院、山口大学大学院医学系研究科などを経て、現職。 日本整形外科学会専門医。

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