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おりものの異常で気づきやすいトリコモナス腟炎

腟トリコモナス症は、性行為によってうつるSTD(性感染症)のひとつ。男性にはほとんど自覚症状が出ませんが、女性はおりものの異常やかゆみで気づくことが多いものです。

<腟トリコモナス症>

肉眼では見えないトリコモナスという原虫が感染することで起こります。ほとんどが性行為によって感染しますが、まれに温泉や温水プールなど多数の人が利用する水場で感染することがあります。

悪臭のある泡立ったおりものとかゆみが特徴

感染後1~2週間で症状が出ます。女性の場合は、腟だけでなく、子宮の入り口や膀胱、尿道へも感染します。
感染すると、男性の場合は軽い排尿痛が起こるくらいで、ほとんど自覚症状がありません。そのため、早期発見が難しく感染を広げてしまうことが少なくありません。
女性の場合は、おりものが泡立ったようになって、緑がかった黄色の膿状になり、悪臭をともないます。また外陰部や腟に強いかゆみが現れます。


しかし、女性の場合でもこのようにはっきりした自覚症状が現れないこともあります。子宮がん検診をしたときに発見されたり、膀胱炎だと思って尿検査を受けたときなどに、偶然見つかるケースもあります。
腟トリコモナス症は、ほうっておいて、炎症が卵管まで広がってしまうと卵管不妊になることがあるので注意が必要です。
また、妊娠中にトリコモナスに感染すると、前期破水や早産を起こすこともあります。


妊娠中は、体の抵抗力が下がっているのでSTDにかかりやすくなっています。STDの予防にはコンドームが欠かせません。多くの人はコンドームといえば避妊具のイメージが強いために、妊娠中は必要ないと考えがちです。けれども、赤ちゃんのためにもママのためにも、妊娠中こそ正しくコンドームを使ってSTDを予防してください。

パートナーと同時に治療しない限り、何度も再発します!

トリコモナス腟炎は、おりものをとって顕微鏡を見ればすぐに診断できます。治療は、抗原虫剤の飲み薬または腟剤を10~14日使って行います。この薬は、アルコールと併用するとめまいや吐き気が起こるので、治療中は禁酒をしてください。治療期間中のセックスも禁止です。
トリコモナスにかかっている場合は、パートナーもかかっている場合がほとんどですから、パートナーも一緒に検査と治療を受けることが大原則。男性にはほとんど症状が出ないため、検査や治療を受けたがらないケースがありますが、パートナーが治療しないと、女性だけが治ってもセックスを再開すればすぐに再感染します。

 

パートナーも一緒に検査と治療を

パートナーとよく話し合って、必ず二人で同時に検査と治療を受けてください。

なお、腟トリコモナス症に限らず、STDにかかっているときは、1種類だけでなく複数のSTDにかかっている可能性も高くなります。ほかのSTDの有無も調べてもらうとよいでしょう。

男性は泌尿器科、女性は婦人科で治療します。

プロフィール

清水(須藤)なほみ先生
産婦人科
清水(須藤)なほみ先生

2001年広島大学医学部医学科卒業
広島大学附属病院産婦人科・中国がんセンター産婦人科・ウィミンズウェルネス銀座クリニック・虎の門病院産婦人科を経て「ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~」を開業
日本産科婦人科学会専門医
日本不妊カウンセリング学会認定カウンセラー
所属学会:日本産婦人科学会・日本性感染症学会・日本思春期学会・日本不妊カウンセリング学会

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