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PMS(月経前症候群)に悩んでいませんか?

月経前になると、乳房が張ったり、手足がむくんだり、イライラ怒りっぽくなることはありませんか? 「月経前の不調はしかたがないこと」とあきらめている女性が多いのですが、症状が重くてつらいときには治療の対象になります。気軽に婦人科で相談を。

悩んでいるのは、あなただけではありません

月経のはじまる2週間前のころから、心やからだにさまざまな不快症状を感じる女性は多いもの。でも、中には仕事や家事にさしつかえるほど症状が強く出る人もいます。このように症状が重い場合を「PMS(Premenstrual Syndrome=月経前症候群)」といいます。
PMSの訴えがとくに多いのは、20~30代。どちらかというと20代はからだの不調を、30代は心の不調を訴える傾向があります。


月経前になると決まって、仕事に集中できなくなったり、ミスを連発したり、怒りっぽくなって周囲との関係を気まずくしてしまったり・・・毎月繰り返し起こるPMSは、周囲からは理解されにくいものだけに、本人の悩みは深刻です。女性であることが嫌になる、という声もよく聞きます。
また、PMSにはストレスも大きく関係していて、ストレスが大きい人はとくに症状が強く出る傾向があります。ストレス社会の現代。働く女性を中心にPMSに悩む人が増えています。

PMSのさまざまな症状

からだの不快症状

・乳房が張る、痛む ・おなかが張る、痛む ・頭が重い、痛む ・腰が痛む ・肩がこる
・冷えがひどくなる ・下痢になる/便秘になる ・手足がむくむ ・吐き気がする

肌の状態

・化粧のノリが悪い ・にきびができる ・肌荒れがひどくなる

心/行動面の変化

・イライラする ・怒りっぽくなる ・急にキレてしまう ・ゆううつになる ・不安になる
・集中力が落ちる ・「ひきこもり」っぽくなる ・性欲が高まる/減退する ・食欲が増す/減退する
・やたらと掃除や整理整頓がしたくなる ・何ごともおっくうになって、やる気が起こらない
・やたらと眠くなる/眠れなくなる

心の不調がとくに強く出る人もいます

PMSは、排卵後から月経が始まるまでの約2週間のあいだに起こります。この期間ずっと不調な人もいれば、月経前の2~3日に急に症状があらわれる人、最初は月経前の数日だけだったのに不調の出る期間がだんだん長くなってきたという人もいます。
不調の内容も人によってさまざまです。いくつもの不調が重なって出る人も多くいます。PMSの症状の中でも、とくに心の不調が強く出る場合をPMDD(Premenstrual Dysphoric Disorder=月経前気分不快症候群)と呼んでいます。わけもなくイライラして怒りっぽくなったり、急にキレてものを投げたり、泣きだしたり・・・。PMDDの人は、情緒不安定になる自分に嫌気がさして「私の性格が変なのでは」と苦しむ人が少なくありません。


でも、月経前の不調は、排卵を期に急激に黄体ホルモンが増減することで起こるもの。PMSやPMDDは、急激なホルモンの変動に脳やからだがついていけなくて、悲鳴をあげている状態です。誰にでも起こりうるものなので、自分を責めてはいけません。
PMSもPMDDも治療で症状を軽減することができますし、医師から日常生活のアドバイスも受けられます。ひとりで悩まずにぜひ婦人科に相談をしてください。

低用量ピルで7~8割の人は症状が軽くなります

PMSやPMDDは、ホルモンの急激な変動によって起こるものです。ですから、低用量ピルでホルモンの波をなだらかにすると、症状が軽くなったり消えてしまうことが多いものです。また、たとえば、頭痛などの痛みには鎮痛剤を、むくみには利尿剤を、落ち込みやイライラには抗うつ剤や軽い精神安定剤を処方するといった対症療法で、症状がずいぶん緩和します。漢方薬をのむのもひとつの方法でしょう。
医師とよく相談をして、自分にあった治療法を選んでください。
また、薬による治療だけでなく、基礎体温をつけてみることもおすすめします。「基礎体温をつけるのは面倒」という女性が多いのですが、最近はパジャマやショーツなどにつけて寝ると、就寝中に自動的に基礎体温が測定できる「衣服内温度計」も出ていますので、上手に利用をしてください。

自分でできるPMS対策

PMSは、日常のちょっとした工夫で症状が改善されることも少なくありません。あなたの生活を見直してみませんか?

基礎体温をつけよう

月経周期のどの時期に、どのような症状が出るのかを記録して把握おけば、イライラする時期は、仕事の量を減らす、デートは延期するなどさまざまな対策がたてられます。「今はPMSが出る時期なんだ」と自覚するだけで症状が軽くなったという統計もあります。

睡眠と休養を十分にとり、自分をいたわってあげよう

PMSは、疲れがたまっているときやストレスが大きいときに強く出る傾向があります。PMSの出る時期は、スケジュールを詰め込まないように調整して、ゆっくり休養を取ることを心がけましょう。マッサージやエステ、アロマテラピーなど、お気に入りの方法でリラックスし、この時期は思いきり自分をいたわってあげてください。

食生活もひと工夫

ビタミンやミネラルが不足すると、症状が重くなりがちです。この時期は、ビタミン&ミネラルが豊富に含まれる雑穀類を意識的にとりましょう。
無性に甘いものが食べたくなる、という人が多いのですが、白砂糖、クリーム、チョコレート類をとりすぎると症状が重くなります。甘いものを食べるなら、洋菓子よりも、黒砂糖、あずき、栗、さつま芋などを使った和菓子がおすすめです。
そのほか、カフェインやアルコール、インスタント食品、塩分の多い食べ物もPMSを悪化させます。できるだけ、避けましょう。

サプリメントも効果的

PMSの症状軽減には、γリノレイン酸、ビタミンB6がとても効果的です。サプリメントで積極的に補いましょう。

からだの血行をよくしよう

PMSの悪化防止には、からだを温めて血行をよくすることも大切です。ゆっくりお風呂に入ったり、ストレッチやウォーキングなどでからだを動かすと、血行がよくなり、ストレス解消にも効果的。安眠効果も期待できます。

プロフィール

対馬 ルリ子 先生
産婦人科
対馬 ルリ子 先生

日本産婦人科学会認定医、日本思春期学会理事、日本性感染症学会評議員、女性医療ネットワーク発起人代表。

2003年、女性の心とからだ、社会とのかかわりを総合的にとらえ、健康維持を助ける女性専門外来をすすめる会「女性医療ネットワーク」を設立。『「女性検診」がよくわかる本』(小学館)ほか著著も多数。近著に『娘に伝えたいティーンズの生理&からだ&ココロの本』(かもがわ出版)がある。