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山崎多賀子さん×島田菜穂子先生「乳がん検診対談」

乳がん検診を受けましょう

ピンクリボン運動が盛り上がっても 伸び悩んでいる検診率


山崎さん(左)と島田菜穂子先生(右)

山崎 今年もピンクリボン月間が始まりましたね。ここ数年はとくに、運動が盛り上がっているようですが、目的である、乳がんの検診率は上がっているのでしょうか?

島田先生(以下島田) そうですね…。ピンクリボンの認知度が急速に高まっているわりに、検診率はわずかにのびている程度で、最近の調査では15~20%です。検診の受診率が50%を越えないと日本の乳がんでの死亡率が下がるところまではいかないと言われているので、まだまだです。

山崎 しかし罹患率も死亡率も相変わらず右肩上がりなんですよね。検診率が上がらないということは、やはり自覚症状があって病院へ検査に行く人が今も圧倒的に多いのですか?

島田 もちろん検診によって早期で見つかる人も少し増えているのですが、7~8割の方はしこりなどの自覚症状を感じ、はじめて病院へ来るようです。

山崎 壁は厚いですね。ところで罹患年齢のピークは40代後半ですが、最近は閉経以降の50代後半から罹患する人が増えているとか。

島田 そうなんです。アジア人の乳がんは、40代半ばと若い年代で罹患することが特徴と言われてきましたが、このところ欧米のように、閉経以降に罹患する人が増えていて、全体のピークがすこし後ろの年齢になってきているようです。かといって、若い年代が減ったわけではなく、こちらも相変わらず増えている。アジア型に欧米型がプラスされた形で非常に嫌なかんじです。

現場の医師たちの実感
20人にひとりではすまされない?

山崎 確かに、乳がんの高齢化、とは言えない実感があります。私の周りでも30代で乳がんが見つかる方をたくさん見かけますから。

島田 30代で罹患される方も確実に増えています。日本では個人情報の関係で罹患に関する正確なデータはとれないのですが、長年診療をしてきた現場の医師たちは、今の状況から、「20人に1人」ではすまされないのでは、と感じています。 

山崎 それはとんでもないことじゃないですか。ただ、検診へ行かない人の気持ちも分かります。まず、この不景気で、市区町村の検診の申し込みからはずれた場合、個人的に乳がん検診を受けると、1~2万円の費用がかかる。1年に一回とはいえ、家計を少しでも切りつめたい主婦にとって、なるかどうか分からない自分の病気より、家族のためにそのお金を使いたい、と思ってしまう人は多いと思います。

島田 そうですね。検診へ行かない人の理由を最近NPOが調査したところ、無料で検診が近い場所ならば受ける、という答えが多かったようです。あと、検診を受けるならば、自分が行きたい施設を自由に選びたいが、市区町村の検診ではそれができない、という声が増えているのが最近の特徴です。昔の調査で圧倒的に多かった、自分は乳がんにならない、と思っている人は減っているようです。

どこへ行けば精度の高い検診が受けられるのか?
それがネックになっている。


マンモグラフィーの画像

山崎 まるで人ごとと、とは思わないようになったのはピンクリボン運動のたまものですが、それが検診率に比例しないのが残念ですね。また、個人的に行こうと思っても、どこに行けば受けられるか分からないというのが、やはりネックのようですね。検診での見落としも話題になり、どうせ受けるなら精度の高い検診を、と思う人が増えていると思います。しかし実際に乳がんになったときの病院選びの情報はあるけれど、検診については少ないです。乳がんを扱う大きな病院で検診ができると思っている人も多いようですし。

島田 乳がん検診をしようと大きな病院へ行ったら、「うちでは検診はしていません」と怒られ、それがトラウマになってしばらく検診へ行けなかった、という方もいました。病院でも検診センターが併設されているところならいいのですが、病院は基本的に乳がんの疑いのある人の検査と乳がん治療のために機能していて、それだけでも大混雑しています。そこへ無症状の検診目的の人を受け入れる余裕はないんですね。

山崎 個人で受ける検診は、乳がん検診の専門医がいる施設に行くべきで、検診サイトもあるようですが…。とくに地方ですと、まだ情報が極端に少ないように思います。自分が健康だと思っている人は、検診施設を探す手間が面倒になりがちです。

島田 さらに市区町村と提携している検診施設は、公的な検診で手一杯で、個人の検診を受け付けていないところも少なくないんですよ。

山崎 そうなんですか? だとしたら、乳がん検診へ行きましょう、といくら言っても、なかなか人は動かないですよね。また、市区町村の検診のチャンスは40歳からで2年に一回。だとすると、30代は実費で行くしか道がない。でも、今の現状を考えると、30代から検診をしておかないと、まずくないですか?
私は44歳で乳がんを検診で見つけましたが、おそらく10年前に乳がんが発症していたと言われました。乳がんは、1cmの塊になるまで10年かかると言われていますね。見つかるピークが40代後半なら、その人たちの多くは発症したのは、30代ということになります。そして、しこりが1cmから2cmになるのはわりとすぐとか。

島田 1cmの段階をもし検診で見落とされたら、翌年は2cmではすまないかもしれません。だから自覚症状がない前に見つけることが大切なんですが。

山崎 私は子宮検診を目的にいって、マンモグラフィもセットになっていたので、たまたま乳がんが見つかりました。乳がん検診をさぼっていたのに、運良くみつけてもらえてラッキーだったんです。それでも、ちゃんと検診へ行っていたら、辛い抗がん剤治療を選ばずにすんだんだろうな、と、今さらながら検診の大切さを身にしみています。私の乳がんはしこりをつくらず広い範囲を石灰化が広がっていたので、マンモグラフィでなければ見つけられないものでした。

若い年代でも超早期の石灰化はマンモグラフィで 見つけることができる!
30代で一度検査を

山崎 国は乳がん検診は40代から、となっていますが、実際はどの年代からどんな検診をやるべきですか? 30代前半まではマンモグラフィは意味がないと言われていますが、若い世代でも、がんの超初期である石灰化はちゃんと映るそうですね。

島田 そのとおりなんです。30代のマンモグラフィ検診はナンセンスだという医師もいます。確かに症状がなければ、毎年撮る必要はないと思いますが、石灰化はマンモグラフィ以外では発見できないのは確かなので、30代になったら一度、自分の乳房の中をチェックしておくというのは悪いことではありません。何もなければ、そのあとは毎年超音波の検診を受けるのが理想です。また20代でも、もし、親近者で乳がんの人がいたら、乳腺の専門医のいる検診施設で相談して、一度、マンモグラフィと超音波の検診を受けておくことをおすすめします。

山崎 その結果、石灰化やしこりらしきものがあれば、半年や1年後に調べて様子を見られる。何もなければ、その結果が、今後の検診のベースになるというわけですね。


乳がん触診模型

島田 はい。そして何よりも大切なのは、やはり自己検診です。ぜひ20代から自分の胸を触る習慣をつけてほしいと思います。胸を手で洗ったり、お風呂上がりにボディクリームでバストケアをするなど、毎日の習慣にしていたら、小さな変化も分かるものです。バストも美しくなり、一石二鳥ですしね。
そして40代になったらマンモと超音波を毎年受ける。閉経して5年たったら、マンモグラフィだけでいいと思います。

壁を打破するには国と一般男性の
理解を深めることも大切

山崎 みんなが乳がん検診に行く。それを現実のものとするために、検診が保険適応になるなど、抜本的な体勢を国がつくらないと、呼びかけだけでは限界があると思います。

島田 そして乳がんは女性だけの問題ではありません。妻や母、姉妹や同僚が乳がんになれば、男性にも直に関わってきますから、男性も巻き込んで話し合う必要がありますね。

山崎 企業で行われる乳がんのセミナーも、女子だけが対象になっている場合が多いですね。しかし男性にも人ごとは思わず現状を知ってもらい、たとえば夫が妻に、「家族のためにも必ず乳がん検診に行けよ」、と言ってくれる。それだけでも検診率が上がると思います。

山崎多賀子

山崎多賀子

1960年生まれ。ルポルタージュ、エッセイなどを手がけ、各誌で活躍。2005年に乳がんが発覚、2006年から女性誌に闘病記を掲載し話題に。

また、美容ジャーナリストという職業と闘病経験を活かし、乳がん治療中もいきいきとキレイでいられるためのメイク法や検診の重要性などを各地で講演。

著書に『「キレイに治す乳がん」宣言!』(光文社)、『山崎多賀子の極楽ビューティ体験記』(扶桑社)がある。

NPO法人キャンサーリボン理事。NPO法人キャンサーネットジャパン認定乳がん体験者コーディネーター。


山崎多賀子

島田菜穂子先生

放射線科専門医、マンモグラフィ読影認定(A判定)、日本乳癌学会認定医、 日本医師会認定健康スポーツ医、日本医師会認定産業医、日本がん検診診断学会認定医 日本体育協会認定スポーツドクター、NPO法人乳房健康研究会副理事長

1988年筑波大学医学部卒。筑波大学付属病院、東京逓信病院、米国ワシントン大学ブレストヘルスセンター、イーク丸の内副院長、東京ミッドタウンクリニックシニアディレクターなどを経て、現在、 ピンクリボンブレストケアクリニック表参道院長。2000年NPO 乳房健康研究会を立ち上げピンクリボン運動など診療の傍ら乳がん啓発活動を推進。

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