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膝の痛みに悩んでいませんか?―変形性膝関節

こんな症状ありませんか

歩きはじめや立ち上がるときなど、最初の動作をはじめるときに膝が痛むことはありませんか?
それはもしかしたら「変形性膝関節症」という病気かもしれません。

変形性膝関節症は、年を重ねるとともに膝関節のクッションの役割をしている軟骨がもろくなり、すり減って起こります。

 

初期のころは、これといった自覚症状はありません。しかし軟骨の摩擦がすすむと、立ち上がり時や階段の上り下りなど膝に負担かかるときに痛みが起きたり、正座をしたりしゃがみこむといった動作がつらくなります。また、膝に水がたまって腫れてきたりします。
変形性膝関節症は45歳ころから増えてきて、年齢とともに増加します。また、男性よりも女性に多くみられるのが特徴で、どの年代においても女性は男性の1・5倍から2倍程度多くみられるという報告もあります。

こんな人は要注意

膝関節の老化によって起こる病気ですが、とくに次のような人は、変形性膝関節症になりやすいといわれています。

  1. 肥満
    体重が1kg増えると膝への負担が約2~3kg増えます。肥満は、膝にかける負担を大きくします。
  2. O脚
    O脚だと、膝の内側により負担がかかり軟骨がすり減って、変形性膝関節症を発症しやすくなります。
  3. 膝に負担のかかる生活様式
    正座をする、和式のトイレを使うといった日本風の生活様式は、膝に負担をかける動作が多くなります。椅子に座ったり、洋式トイレを使う洋式の生活スタイルの方が、膝にかかる負担は少なくなります。
  4. 脚の筋力不足
    膝の関節を守っているのが、太ももの前面にある大腿四頭筋といわれる筋肉です。この筋力が低下していると、それだけ膝にかかる負担が大きくなります。

症状がひどくなる前に早めの治療がポイント

すり減ってしまった膝関節の軟骨はもとに戻すことはできません。でも、大腿四頭筋を鍛えるトレーニングを中心に、膝の負担を軽くする装具(足底板)などを用いるなどの治療を行うことで、膝の機能を高めることができます。また、つらい症状を軽くするために、消炎鎮痛剤の内服や湿布、関節注射などの薬物療法を行うこともあります。膝を温める温熱療法も有効です。
これらの療法でも効果が得られず、症状が進行している場合は、手術などを検討することもあります。ただし、手術には当然リスクも伴いますし、人工関節に置き換える人工関節置換術などでは大がかりな手術になります。病気が進行する前に早めの受診をおすすめします。
また、変形性膝関節症だと思っていたら、ほかの病気が原因で膝痛が起こっていることもあります。
膝の調子が変だなと思ったら、検診を兼ねて気軽に整形外科を受診してください。変形性膝関節症を予防する日常生活のアドバイスも受けられます。

予防と対策―ここがポイント

肥満の解消

肥満の人は、適正体重を目指して体重管理をしましょう。1~2kgやせるだけでも、膝にかかる負担が軽くなります。

洋式の生活を取り入れる

しゃがむ、床に座るといった動作は膝に負担をかけます。ベッドや椅子、洋式トイレなどを取り入れましょう。

足の血行をよくする/膝を冷やさない

急な痛みは冷やしますが、通常は入浴やマッサージなどで膝をあたためて血行をよくしましょう。保温用のサポーターなども上手に活用してください。

運動不足を解消する

膝が痛むから歩かない、運動をしないという生活を送っていると、膝の関節を守る筋肉が落ちてさらに膝に負担がかかる、という悪循環に陥ります。医師の指導に従って、運動をしましょう。おすすめは、水中歩行やウォーキングです。

筋トレ&ストレッチをしよう

家庭やオフィスでできる簡単なトレーニングとストレッチをご紹介します。ただし、痛みが悪化するような場合は運動を中止してください。

椅子に座って

大腿四頭筋を鍛えるトレーニングです。椅子に深く座って、片方の脚をまっすぐ前に伸ばして上げ下げします。脚を上げるときは、膝を自分の方へ引き込む気持ちで行って。1セット10回として2~3セット。反対側も同様に。

 

あお向けになって行うトレーニング

あお向けになって、片脚は軽く膝を曲げ、もう一方の脚はまっすぐ伸ばす。伸ばしたほうの脚を床から10~20cm程度離して、そのまま上げ下げします。

膝裏とふくらはぎのストレッチ

足を前後に開いて、壁に向かって立ち、壁との距離を30~40cm程度あけます。前側の膝を曲げ、後ろ脚の膝の裏とふくらはぎを伸ばします。そのまま20~30秒間キープしたら、反対側も同様に。後ろ側のかかとはしっかり床につけておくことがポイントです。

 

 

プロフィール

大井 律子 先生
整形外科医
大井 律子 先生

医学博士 山口大学女性外来担当医

熊本県生まれ。 1997年、高知医科大学卒業。 同年、山口大学医学部整形外科教室へ入局し、医局関連病院、山口大学大学院医学系研究科などを経て、現職。 日本整形外科学会専門医。

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