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正常なはずの血糖値が命を奪うこともある「血糖値スパイク」とは?

「血糖値スパイク」・・最近テレビや新聞などで取り上げられたことから、ご存知の方も多いでしょう。放っておくと心筋梗塞や脳梗塞、認知症などを引き起こすといわれます。ふだんは血糖値のことなど気にしたこともない、病気とは縁遠そうな人をもおそう、このこわい病気の正体とは? どうすれば解消できるのでしょうか?

 

健康診断では血糖値の異常は見られないのに、なぜ高血糖?

ふだんから血糖値が高いわけでもない、まして糖尿病でもない、健康診断でも「異常なし」といわれたし・・なのに突然、食後の短い時間だけ血糖値が急上昇! そして再び正常値に・・そんな血糖値の異常な現象を「血糖値スパイク」といいます。

 

血糖値が常に高い状態にある場合を糖尿病といいますが、通常、血糖値は1日を通して上下の起伏が少なくゆるやかに変化しています。ところが血糖値スパイクは、食後の短時間の間、急激に血糖値の上昇が見られ、2時間を過ぎると正常に戻るという傾向が見られます。血糖値スパイクというのは、そのときの血糖値の変化を示すグラフがとがった針のように見えるからというのが名前の由来のようです。

 

血糖値スパイクはどうして起こるのでしょうか。 

通常、食事をすると糖は腸で吸収され、血液中に入ります。するとすい臓からインスリンが分泌されて糖を分解、細胞に送り込まれてエネルギーとして消費されます。これによって血液中の糖は一定に保たれます。

ところが血糖値スパイクを起こしている人は糖を細胞に取り込む能力が低いために、血液中の糖の量が過剰になり、すい臓がより多くのインスリンを分泌しようとします。このとき血糖値スパイクが起こるというのです。

 

誰もが血糖値スパイクの予備軍。若いからと安心は禁物?

血糖値スパイクを起こしている人は、日本全体で推定1400万人以上もいるといわれます。血糖値スパイクはどういった人に起こりやすいのでしょう。

 

朝ご飯を抜いて食事の間隔をあけ過ぎたり、「お腹すきすき状態」でご飯を大量に食べたり、忙しくて早食いになってしまう人、親族に糖尿病の人がいる、高血圧の人などに起こりやすいといわれます。やせた20〜30代の人も要注意といわれています。つまり老若男女、誰にでも起こる可能性があるということです。

「まだ若いし、高血糖なんて他人事」なんて考えている人も安心はできません。

 

血糖値スパイクの厄介なのは、「空腹時の血糖値」を調べる通常の健康診断では見つけにくいことです。知らないまま放置すると本当の糖尿病に移行する危険性が高いのはもちろん、動脈硬化を招き、脳梗塞、心筋梗塞などのリスクを高めるといわれています。

 

なぜ、食後の血糖値の急上昇が動脈硬化を引き起こすのでしょうか。

血糖値スパイクによって血液中の糖が増えると、細胞を傷つける有害物質の活性酸素が大量に発生し血管を傷つけます。すると傷ついた血管を修復しようと免疫細胞が集まり血管の内側にはり付き、有害な活性酸素とたたかうのです。戦い力つきた免疫細胞は血管の内側にたまり血管を狭くしてしまいます。こうして動脈硬化が起こります。

 

血糖値スパイクはほかにも認知症やがんにかかるリスクを高めるともいわれています。

自分に血糖値スパイクが起こっていることを調べるには「75gブドウ糖負荷試験」というものがあります。ブドウ糖が入った液体を飲んで、30分ごとに2時間後までの血糖値を調べるものです。人間ドックの検査項目に入っている場合もあります。希望すれば調べてくれる病院もあるそうです。

通常の健康診断では「異常なし」ということから、血糖値のことなど気にもしないまま過ごす人が多いにちがいありません。自分に血糖値スパイクの危険度が高いと判断されたら、どうすればいいのか。

 

次回のコラムでは、日常生活でできる血糖値スパイク解消のヒントを紹介します。

 

 

<参考URL>

*「NHKスペシャル血糖値スパイクが危ない」(NHK)

http://www.nhk.or.jp/special/kettouchi/result/index.html

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。