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寒くなると気分が落ち込み、過食、過眠に走る人はもしかして「冬季うつ」かも

秋の日はつるべ落としという言葉がありますが、秋は本当にあっという間に日が暮れますね。この季節、なぜか人恋しくなったりもの悲しくなったりしませんか? 秋は誰しも気分が落ち込み気味になります。でも、冬の間中わけもなく憂うつな気分が続くようなら、それはもしかして「冬季うつ」といわれるものかもしれません。

 

冬になると甘いものがやたらほしくなる、無性に眠くなる人は要注意

「冬季うつ」というのは、文字通りに日照時間が短くなる秋や冬に限ってこれといった理由もないのにうつ状態になり、春になると自然にうつ状態から回復していくものをいいます。季節性感情障害とも呼ばれます。
一般にうつ病では食欲がなくなり、不眠になりますが、冬季うつはその反対の現象が起こります。ケーキや菓子パンなど甘いものや炭水化物がやたらと欲しくなり、無性に眠くなって睡眠時間が異常に長くなったりします。まるで動物の冬ごもりのように、過食と過眠が起こるのが大きな特徴です。
冬季うつは、20代~30代の女性に多いといわれています。「そういえば、私……」と思い当たる人も多いのではないでしょうか。
 

日照時間が短くなる季節は、元気ホルモンが減って体内時計も乱れがち

冬季うつは、日照時間が深く関係していて、冬が長い地域の人に多くみられることがわかっています。また、陽の当たらない部屋にいる人も、冬季うつになりやすいといといわれています。
はっきりしたメカニズムはまだわかっていないようですが、冬季うつの一因にセロトニン不足が考えられています。

私たちの心を元気に前向きにしてくれる脳内ホルモンに「セロトニン」があります(「肉を食べて幸せに―気持ちが凹んだときは肉を食べよう!」参照)。
セロトニンが活性化しているときは、気持ちが明るく前向きになってストレスにも強くなるといわれています。そのセロトニンをつくるのに欠かせないのが太陽の光。日光に当たると、目から脳に信号が出され、脳内でセロトニンがつくられるのです。
ところが、秋も深まってくると日照時間がグンと減ります。そのため、セロトニンが減少。セロトニンの現象により、うつ症状が出やすくなるといわれています。

セロトニンとともに、もうひとつ、冬季うつののカギを握っているといわれているのが、メラトニンという睡眠ホルモンです。メラトニンは、睡眠を調整し、体内時計リセットしてくれる働きをもちますが、太陽の光を浴びる量が減ってメラトニンが十分に分泌されなくなると、睡眠&覚醒のリズムが乱れて体内時計も狂いがち。活動的な気持ちにスイッチが入らなくなってしまうのです。
 

自分でできる冬季うつの予防と対策

冬季うつの予防と対策に必要なのは太陽の光。日光にあたる生活を心がけましょう。また、セロトニンを増やすためには、セロトニンの材料となる、肉、魚、大豆などのタンパク質をバランスよく摂る食事も心がけて。さらに体内時計を整えるには運動も有効です。
それでも仕事に支障をきたすほど症状が強いときには、がまんしないで早めに心療内科や精神科を受診することをおすすめします。

 

<参考URL>
・文部科学省「健康なくらしに寄与する光 2 光の治療的応用―光による生体リズム調節―」http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/attach/1333542.htm
・新潟県「冬は明るく過ごしましょうー冬季うつ病についてー」http://www.pref.niigata.lg.jp/uonuma_kenkou/1356775277579.html

 

プロフィール

医療ライター
中出 三重

株式会社エム・シー・プレス勤務(医療ライター・編集者)

*出版社勤務、フリー編集者を経て、企画・編集室/株式会社エム・シー・プレス勤務。

*女性を取り巻く医療と健康、妊娠・出産・育児の他、予防医学、治療医学などを中心に、多くの単行本を企画・編集・執筆。

*楽しく食べること、おいしく飲むことをこよなく愛する。休日の楽しみは公園ごはんと街歩き。