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一度かかるとやっかいな性器ヘルペス

性器ヘルペスは、クラミジアの次に女性が感染しやすいSTD(性感染症)です。一度感染すると完治がむずかしく、再発をくり返す人が少なくありません。

<性器ヘルペス>

単純ヘルペスウイルスの感染によって発症します。女性では性器クラミジア感染症に次いで多く見られるSTDで、女性の感染者は男性の2.4倍にのぼります。発症のピークは、男性では30~40代、女性ではそれよりも若く20~30代にピークがあります。

原因となるは単純ヘルペスというウイルスです。単純ヘルペスウイルスには、I型(HSV-I)とII型(HSV-II)の2つのタイプがあって、1型は主に口や唇に、II型は主に性器に感染するとされていました。しかし、オーラルセックスが当たり前になってきたせいで、現在では口唇型が性器に感染したり、その逆のパターンもあるなど、口と性器のウイルスの住み分けがなくなってきました。

初感染のときは激しい痛みで歩けないことも

潜伏期間は1~2週間です。 性器ヘルペスは発症すると、性器や肛門周囲などに米粒大の水疱(水ぶくれ)ができます。水疱は、すぐに破れて潰瘍(かいよう)になります。
初めての感染では外陰部に水疱や潰瘍が広がると同時に、そけい部(脚の付け根)のリンパ節が腫れたり、発熱を伴うことがあります。また、強い痛みで排尿困難になったり、歩けないほどの激痛を伴うこともあります。
STDの多くはコンドームで予防できますが、性器ヘルペスの場合、コンドームでおおわれる部分以外にウイルスがいれば、コンドームをしていても感染することがあるので注意が必要です。

感染力があっても自覚症状がない場合も

パートナーも一緒に検査と治療を

また、最近は、まったく症状が出なくてもウイルスをまき散らして感染させる「不顕性感染」が増えています。そのため、病気に気づかずに感染させてしまうケースが多くあります。
さらにやっかいなことに、性器ヘルペスは一度感染すると、治ったあともウイルスが体に住みつき、何度も再発を繰り返すことです。
また、初感染で症状が出なくて、体の抵抗力が落ちたときに症状が出てくることもあります。

感染源の特定がむずかしい病気

治療は、抗ウイルス剤の塗り薬や飲み薬ですが、重い場合は入院して点滴治療を行います。パートナーと一緒の治療が不可欠です。また症状があるうちは、もちろんセックスは禁止です。 STDにかかると、カップル同士で「どちらがうつしたのか」という犯人探しをしがちですが、性器ヘルペスは、ウイルスに感染しても症状が出なかったり、症状が出ていても気づかなかったしするケースもあり、感染源の特定がむずかしいといわれています。以前のパートナーが感染源であるなど、さまざまな可能性が考えられるので、犯人探しは不毛であることを覚えていきましょう。

8割以上が1年以内に再発。妊娠中は特に注意を!

いったん治っても再発率は高く、8割以上が1年以内に再発するといわれています。月経の前後や妊娠中、疲れたときや寝不足のときなど。またステロイドを使ったりして免疫抑制状態のときに再発しやすくなります。人によっては、月経のたびに再発することもあります。 再発時も水疱や潰瘍ができますが、初感染のときに比べて症状はだいぶ軽くなります。しかし、不快であることには変わりありません。

再発を繰り返す場合は、我慢しないで医師に相談を

年6回以上再発を繰り返す場合は、ヘルペスは出たときに使う薬と同じものを症状がないうちから毎日飲み続ける「維持療法」の対象になります。たびたび繰り返す人は、医師に相談するとよいでしょう。 なお、妊娠中の感染や再発には特に注意が必要です。 ヘルペスが発症しているときに出産すると、赤ちゃんに感染し、全身ヘルペス症やヘルペス脳炎などを発症し、死亡したり、助かっても重大な後遺症を残すからです。そのため、分娩直前に外陰部にヘルペスの症状がある場合は帝王切開で出産するのがふつうです。

プロフィール

清水(須藤)なほみ先生
産婦人科
清水(須藤)なほみ先生

2001年広島大学医学部医学科卒業
広島大学附属病院産婦人科・中国がんセンター産婦人科・ウィミンズウェルネス銀座クリニック・虎の門病院産婦人科を経て「ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~」を開業
日本産科婦人科学会専門医
日本不妊カウンセリング学会認定カウンセラー
所属学会:日本産婦人科学会・日本性感染症学会・日本思春期学会・日本不妊カウンセリング学会

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