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女性に深刻な後遺症を残す性器クラミジア感染症

STD(性感染症)には、はっきりとした自覚症状が出るものもありますが、感染してもほとんど症状がでないものがあります。その代表格が性器クラミジア感染症です。今もっとも流行していて、女性に深刻な後遺症をもたらしています。

<性器クラミジア感染症>

セックスにより、クラミジア・トラコマティスという病原体に感染して発症します。クラミジアは、かつては「トラコーマ」といって結膜(目の粘膜)に感染し、目の伝染病として蔓延していましたが、現在は形をかえて、性器に起こる感染症として大流行しています。
性器クラミジア感染症は、現在日本でもっとも多いSTDです。女性が感染源になりやすく、感染率がいちばん高いのは20~24歳、次いで15~19歳と若い世代で蔓延しています。また、クラミジアはオーラルセックスにより咽頭にも感染します。性器クラミジアに感染している女子の4人に1人は咽頭からクラミジアが検出されたという報告もあります。
なお、妊婦さんからも4~10%の割合で検出されているという報告もあります。

男性の5割、女性の8割は症状が出ません

性器クラミジア感染症は、男性では尿道炎、女性では子宮頸管炎として起こります。潜伏期間は1~3週間です。
男性では、尿道に軽い炎症を起こし、排尿時にわずかに尿がしみたりしますが、感染しても5割は症状が出ないといわれています。

女性では、約8割が無症状といわれています。症状が出る人も、下腹部痛や不正出血などが現れることもありますが、多くはおりものが多少増える程度です。

女性は不妊症、子宮外妊娠などの原因に

性器クラミジア感染症は、ほとんどの場合症状が出ないため、気づかないまま感染が拡大していきます。また、本人も知らないうちに病気が進行してしまうこともこの病気の怖いところです。そして進行するほど治療がむずかしくなります。
女性の場合は特に後遺症が深刻です。クラミジアは、最初は子宮の入り口(子宮頸管部)に感染しますが、進行とともに子宮から卵管へ、卵管からさらに腹部全体に広がっていき、骨盤腹膜炎へと発展して、高熱が出たり下腹部が激しく痛んだりすることもあります。こうなるとただちに入院が必要です。

 

また、不妊や子宮外妊娠の原因になったりします。

図

妊婦の場合は、流産や早産の原因になったり、出産時に産道で赤ちゃんに感染して、新生児結膜炎や新生児肺炎などを引き起こします。

子宮頸管→子宮内→卵管→骨盤腹膜へと炎症を拡げていきます。炎症が奥へと広がるにつれ、治療もむずかしくなります。

クラミジアの陰にエイズあり

さらに、気をつけたいのがSTDの複合感染。1つのSTDに感染しているとほかのSTDにも感染しやすいのです。それはクラミジアも例外ではありません。STD感染の中でもとくに心配なのが、HIV(エイズの原因となるウイルス)感染です。クラミジア感染による「炎症」がバリア機能を壊してしまうため、HIVへの感染率も高まります。クラミジア感染者のHIV感染率は、クラミジアのない場合と比べて3~5倍にまではね上がってしまうのです。

 

複数のパートナーとの性経験がある人や、たとえパートナーが1人であっても、セックスのときにコンドームを使用していない場合は、性器クラミジア感染症にかかっている可能性があると考えて、婦人科で検査を受けましょう。おりもの検査や血液検査(抗体検査)で感染の有無がわかります。

必ずパートナーと一緒に治療を!

パートナーも一緒に検査と治療を

再感染を防ぐためにも大事なことは、必ずパートナーも一緒に検査を受け、同時に治療を行うことです。ただし、男性の場合は尿検査が主体ですが、この場合、朝一番の尿でなければ偽陽性の出る率が高くなってしまうので注意が必要です。偽陽性というのは、本当は陽性なのに陰性と出てしまうことです。


したがって、男性の検査結果が陰性であっても、女性が陽性なら、必ず2人同時に治療することが大事です。
クラミジアの感染と診断されたら、治療は比較的簡単です。クラミジア感染症に効果の高い抗生物質を服用します。これまでは、2週間毎日薬を飲み続ける方法が一般的でしたが、最近では1回(4錠)の内服だけで治療が終わる薬が健康保険の適応となり、治療の主流になりつつあります。

プロフィール

清水(須藤)なほみ先生
産婦人科
清水(須藤)なほみ先生

2001年広島大学医学部医学科卒業
広島大学附属病院産婦人科・中国がんセンター産婦人科・ウィミンズウェルネス銀座クリニック・虎の門病院産婦人科を経て「ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~」を開業
日本産科婦人科学会専門医
日本不妊カウンセリング学会認定カウンセラー
所属学会:日本産婦人科学会・日本性感染症学会・日本思春期学会・日本不妊カウンセリング学会

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