プラスコラム
PLUS COLUMN

更年期を健康に、快適に

みなさんは、更年期にどんなイメージがありますか? 「まだまだ若いと思っていたのに、私が更年期だなんて」とがっかりする人もいますが、更年期はまだ人生の折り返し地点をすぎたところ。これからの人生をハッピーに過ごすための準備期間と考えましょう。

体の変化とうまく付き合いながら、いかに快適に過ごすかを考えましょう

昔の女性は、閉経のころに寿命を迎えていましたが、今や「女性の人生は90年」の時代。閉経後も40年近く人生が続きます。エストロゲンの恩恵がなくなったあとも、どのように健康に快適に生きていくかが私たちにとっての大きな課題です。


子孫が残せる間は、女性はエストロゲンによって体が守られていますが、生殖年齢を過ぎると、その人の生来に備わっている体質的に弱い部分が出てくるようになります。また、体や内臓の老化も始まり、免疫力も低下しますから、がんや感染症にかかりやすくなるでしょう。自分はまだまだ若い、病気になるはずがない、と自分の健康を過信していると、老いや病気に直面したときにがっかりして自分を受け入れられなくなってしまいます。


それよりも、人間は、もともと弱いところをもっている不完全なものであると考えてみてはどうでしょうか。エストロゲンというお守りがなくなる更年期からは、老いや病気が忍び寄ってきますが、そうした体の変化とうまく付き合いながら、この後に続く人生をどう快適に生きていくか、また人間として豊かに過ごしていくかを考えることが大事なのだと思います。

心までを含めたヘルスケアをして、新しいライフスタイルを作る時期

更年期は、その後に続く老年期の準備期間です。この時期前向きに過ごすのと、後ろ向きに過ごすのでは、その後の生活のクオリティ(質)が違ってきます。
低用量ピルやHRT(ホルモン補充療法)などの女性ホルモン剤は、上手に使うと若々しく生き生きと生活を送ることが可能です。HRTはあきらかな更年期障害と診断されなくても使えます。自分のQOL(生活の質)保つために使ってみるのもひとつの方法でしょう。漢方薬やサプリメントなども柔軟に試してみてください。


また、元気に長生きするには、更年期からの健康管理がとても大切になります。長い人生、誰でも一度や二度は病気にかかりますが、検診を受けて病気を早期に発見し適切に治療すれば、長く入院したりつらい治療をしなくてもすみ、病気になってもQOLが保てます。これからは積極的に女性検診や健康診断を受けていきましょう。
また、昔のおばあさんは、骨粗しょう症で腰が曲がっても「年のせい」という言葉ですませてきましたが、今は、高齢者の健康維持やQOLを保つために、よい知識や方策がいろいろあります。更年期からは、こうした情報にアクセスして、運動や栄養面も見直していきましょう。


また、更年期世代になると、親の病気や介護の問題が起こったり、子どもが自立したり、仕事をもっている人なら重要な仕事を任されて多忙になるなど、環境面でもさまざまな変化やトラブルが起こりやすい時期です。増大するストレスに押しつぶされないように、仕事のやり方を変えたり、夫婦や家族、職場の人間関係をどうメンテナンスしていくかというところまで含めてヘルスケアをしていきましょう。 更年期を上手に乗り切ることができると、これからの毎日に自信がつきます。

プロフィール

対馬 ルリ子 先生
産婦人科
対馬 ルリ子 先生

日本産婦人科学会認定医、日本思春期学会理事、日本性感染症学会評議員、女性医療ネットワーク発起人代表。

2003年、女性の心とからだ、社会とのかかわりを総合的にとらえ、健康維持を助ける女性専門外来をすすめる会「女性医療ネットワーク」を設立。『「女性検診」がよくわかる本』(小学館)ほか著著も多数。近著に『娘に伝えたいティーンズの生理&からだ&ココロの本』(かもがわ出版)がある。