食中毒
[しょくちゅうどく]
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受診するなら
細菌やウイルスなどの病原微生物や、動植物に含まれる自然毒、有害な化学物質などが混じったものを食べたり飲んだりして起こる病気を食中毒といいます。
病原微生物による食中毒には、食品に付着した細菌が体内に摂取されてさらに増殖する「感染型」と、すでに食品の中で増殖した細菌が毒素をだしているものを食べて発病する「毒素型」のほか、ウイルスによるものがあります。
症状
多くは腹痛や下痢、吐き気、おう吐などの急性の胃腸症状をともないます。
発熱、頭痛などが起こることもあります。
ほとんどは対症療法で治りますが、原因によっては重症化したり死亡することもあります。
原因
細菌やウイルスなどによるもの、寄生虫や原虫によるもの、フグやキノコの毒など自然毒によるもの、農薬など化学物質によるものに大別できます。
ただ、実際の食中毒のほとんどは、細菌やウイルスなどの病原微生物への感染によるものです。なかでもノロウイルスが原因の食中毒が半数以上を占めています。
治療
ストレスの有無や常用薬のチェックをして、原因がわかったら、できる限りそれらを排除します。
同時に、口の中を衛生的に保ち、噛みごたえのあるものを十分に噛んで、唾液が出やすいように心がけましょう。
注意したいこと
食中毒にかかった場合、毒物を早く体の外に排出する必要があるので、早期に薬を使って下痢やおう吐を勝手に止めるのはやめましょう。
また、脱水症状を起こしやすいので水分をこまめに補給する必要があります。
おもな食中毒の症状・原因・治療
●サルモネラ食中毒
主に発熱、おう吐、腹痛、下痢などがみられます。ふつうは1週間ほどで回復しますが、乳幼児や高齢者は重症になりがちです。
サルモネラ菌は、イヌ、ネコ、ネズミ、ニワトリや病人、保菌者の糞便を汚染源に、食肉や鶏卵に付着していることが多いので、加熱することが大切。治療は、輸液を中心に行います。重症の場合は、脱水症の治療と全身管理を点滴にて行います。
●腸炎ビブリオ食中毒
腹痛、おう吐、下痢、軽い発熱があります。下痢は水様便を1日数回、血液や粘液が混じることもあります。
アジ、カレイ、イカ、イワシなど、水揚げ後の処理が悪い魚介類に付着して、これらを食べることで感染します。菌が付着した野菜や漬け物を食べても感染します。
治療は、脱水症状には輸液を行います。抗菌薬は使わず、多くは3〜4日で治ります。高齢者は脱水を起こして重症化しやすいので注意が必要です。
●カンピロバクター食中毒
発熱、強い腹痛、1日数回以上の水様性下痢や血液の混じった下痢がみられます。カンピロバクター菌はイヌ、ネコ、ニワトリ、ブタ、ウシ、小鳥などに下痢を起こさせる細菌。これらから食品を通して人間にも感染します。
治療は、自然に治ることも多いのですが、症状が重いときは、抗生物質を使用します。
●ボツリヌス菌食中毒
倦怠感、頭重感、おう吐、腹痛、下痢などの胃腸症状に次いで、まぶたが開かない、ものが二重に見える、視力低下などの神経、筋肉のマヒ症状が起こり、発語障害、呼吸困難などがみられます。感染後1週間で重症化し命にかかわります。ボツリヌス菌に汚染された食品を不十分な温度で調理すると細菌の胞子が生き残り、室温で発芽、増殖して毒素を出します。ハム・ソーセージやいずし、筋子などが原因食になります。
治療は、抗毒素血清を注射します。
●腸管出血性大腸菌による食中毒
水様性下痢、血便、腹痛、発熱などがみられます。病原大腸菌の一種で、O157としても有名な腸管出血性大腸菌のつくる毒素(ベロ毒素)の感染によって起こります。ウシやヒツジなどの家畜の排泄物から食べ物や水を通じて感染します。感染力が強く、高齢者では重症化し命にかかわることもあります。
治療は、輸液や抗菌薬を使用します。下痢止めは使いません。
●黄色ブドウ球菌食中毒
吐き気、おう吐、上腹部痛、水様性下痢などがみられます。発熱はありません。
黄色ブドウ球菌は、人や動物の常在菌で、熱に強く、食べ物に付着して、適度な温度と湿度のもとで増殖し毒素をつくります。黄色ブドウ球菌は、人の鼻や咽頭、化膿した傷口などに多く存在するので、調理する人の唾液や傷口から食品に飛び散らないように注意します。
とくに治療を施さなくても半日〜1日ほどで治ることが多いのですが、下痢やおう吐などの症状が強い場合は、病院で治療します。
●ウェルシュ菌食中毒
はげしい腹痛と下痢がみられます。発熱はなくおう吐もまれです。
ウェルシュ菌は、人や動物の大腸に常在して、魚類や肉類などの食べ物を通じて感染します。熱に強く、100℃で30分の加熱にも耐えられるので、菌に汚染された食品を加熱調理してもウェルシュ菌は死滅せず、増殖が可能です。調理したものはすぐに食べるか冷蔵庫で保存します。治療は、多くの場合、軽症で1日〜2日で回復します。
●ノロウイルスによる食中毒
吐き気、はげしいおう吐、腹痛、下痢などのほか、発熱がみられることもあります。
症状は1日〜2日で回復しますが、回復後も3日〜7日間は糞便とともにウイルスが排出されるので、ほかの人へ感染する危険があります。また、発病した人の吐瀉物にもたくさんのウイルスが含まれているので、適切な処理をしないとさらに感染を広めてしまいます。
ノロウイルスは生ガキが主原因ですが、発病者の糞便を介して2次感染を起こすので、排便後の手洗いはもちろん、食品や食材を扱う人は十分な注意が必要です。
治療は、脱水症状の予防が中心で、有効な治療法はありません。高齢者は吐いたものをのどに詰まらせたり、脱水症状で命にかかわることがあります。
●毒キノコによる食中毒
毒キノコの種類によって症状が違いますが、おう吐や腹痛、下痢などの急性の胃腸症状や、よだれや視力障害などの神経症状がみられます。毒キノコによる食中毒が疑われたらすぐに救急車を呼びます。多くは数時間から1日で回復します。治療は、胃の洗浄と下剤を使い毒を排出させます。
●フグ毒による食中毒
口や唇、舌、指先などがしびれ、次いで手足がマヒして動けなくなります。フグの卵巣や肝臓などに含まれる毒物を食べることで中毒を起こします。
命にかかわります。至急、救急車を呼び、集中治療が可能な施設で治療を受けます。胃や腸の洗浄を行い、強心剤、解毒剤、肝保護剤などを使います。